畑土壌における微生物活性指標としてのα-グルコシダーゼ活性の標準値と測定条件
【 要約 】 微生物活性の指標であるα-グルコシダーゼ活性の十勝地方における火山性畑土壌での標準的な範囲を550〜750pmol・g-1・min.-1とした。これによって農家圃場での有機物分解菌の活性を総合的に評価することができる。
北海道立十勝農業試験場 土壌肥料科 連絡先 0155-62-2431
部会名 生産環境 専門 土壌 対象 分類 指導

【 背景・ねらい 】
 作物への養分供給や腐植・団粒の生成等、土壌の基本的な機能と深く関連する土壌微生物の活性を評価するための手法として、α-グルコシダーゼ活性の測定が有効である。このα-グルコシダーゼ活性を指標として、農家圃場の微生物活性の高低を判断するための"標準値"を設定するとともに、適切な土壌の採取時期、保存条件を検討を明らかにした。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 十勝地方の火山性畑土壌におけるα-グルコシダーゼ活性の平均値は580nmol・g-1・min.-1(以下単位を省略)であり、50%の圃場は450〜700の範囲にある(図1)。
  2. 淡色黒ボク土と多湿黒ボク土で窒素地力や土壌有機物が減耗方向にある有機物管理を継続した処理区のα-グルコシダーゼ活性は、500前後である(表1)。
  3. 有機物分解の抑制が起こらない気相率15%以上のときのα-グルコシダーゼ活性は550前後であり、気相率が10%以下ではそれよりも大きく低下する(表2)。
  4. 他の試験結果も含めて、α-グルコシダーゼ活性の標準値を550〜750とする。これ以下では、微生物活性が低く問題であり、それ以上では標準よりも高レベルの圃場と位置づけることができる。黒ボク土でα-グルコシダーゼ活性が低い要因の多くは、微生物基質としての有機物量や有効態リン酸等の不足であり、多湿黒ボク土では排水不良が原因することが多い。
  5. α-グルコシダーゼ活性の測定条件を以下のようにする。標準値を利用する場合の測定時期は、4月中、及び7月以降が望ましい。その際作付作物は問わないが、秋播小麦の起生期から収穫までは測定に適さない。土壌採取後直ちに分析することが好ましいが、それができない場合には、土壌を冷暗所に保存し、10日間以内に分析する。ただし、ふるい通しは分析の直前に行う。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 標準値の適応範囲を十勝地方の火山性土壌とする。

【 具体的データ 】

表1. 異なる有機物処理を継続した圃場の酵素活性
  (十勝農試農試圃場、昭和50年処理開始)
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      α-グルコシダーゼ  易分解性 熱水抽出   20年間の
処理内容  (pmol・g-1・分-1)     有機物量 性窒素   全窒素変動
      ----------------
       6年  7年       (mg・100g-1)(mg・100g-1)
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3要素     473  515           20.5    2.1     微減
堆肥1.5t連用 659  599           33.3    3.2   微増or変化なし
堆肥3t連用  664  679           36.9    4.0     微増
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   全区で収穫残渣を搬出した。


表2.気相率がα-グルコシダーゼ活性に及ぼす影響(淡色黒ボク土を供試)
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気相 水  分 αーグルコ 炭酸ガス
率  含有率
(%)  (%)   シダ-ゼ*  放出量**
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  5  38    264      0.08
 10  37    413      0.21
 15  35    561      0.34
 20  33    556      0.59
 25  31    547      0.52
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*:pmol・g-1・min.、**:Cmg・日-1・100g-1

【 その他 】

研究課題 :北海道の立地特性を生かした環境調和型農業の確立、畑地生態系制御による有機物管理技術の確立
予算区分 :道費
予算期間 :平成7年度(平成3年〜7年)
研究担当者:東田修司、山神正弘、
発表論文等:

        「平成8年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.344