なたねの機械化栽培技術
【 要約 】 なたねの播種、防除、収穫および乾燥について既存の作業機を基幹とする機械化作業技術を検討した。播種はベルト式およびロール式点播機が良好な播種精度であった。ブームスプレーヤおよび動力散粉機は薬剤の付着が良好であった。直流形およびスクリュー形コンバインは脱穀選別損失が少なく、リールヘッダ装着時の刈取り部損失は3%以下であった。なたねを循環型乾燥機で乾燥した結果、毎時乾減率は約0.60%/hであり、約90%が規格品であった。
北海道立中央農業試験場・農業機械部・機械科 連絡先 01238-9-2001
部会名 農村計画(農業物理) 専門 機械、栽培 対象 園芸作物 分類 指導

【 背景・ねらい 】
 なたねは無エルシン酸の秋播品種が近年育成され、油料作物として見直されるとともに、小麦の連作が多い転換畑の輪作を維持するための作物として道央地帯への導入が期待されている。これまで北海道ではなたねの栽培面積が極めて少ないことから栽培技術はもとより機械化栽培体系について十分な検討がなされていなかった。このようなことから、「キザキノナタネ」を対象に播種、防除、収穫、乾燥について既存の作業機を基幹とする機械化作業技術を検討した。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 無間引き栽培とするため、播種間隔10cm・2粒点播となるよう播種精度の向上を図った。ベルト式およびロール式点播機は播種間隔が10cm、おおむね2粒点播となったが、種子を2mm以上に粒径選別すると播種精度はさらに向上した。作業能率はベルト式点播機が0.82ha/hであった。
  2. 防除作業の際、トラクタによる作物の踏みつけを少なくするため片竿ブームスプレーヤ(液剤)ならびにトラクタ用動力散粉機による作業法を検討した。ブームスプレーヤおよび動力散粉機は薬剤の付着が良好であった。一方、ブームスプレーヤの踏みつけ割合は、面積2.7haに対し0.47%であった。作業能率はブームスプレーヤが1.9ha/hであった。
  3. コンバインによる収穫では、直流形およびスクリュー形コンバインとも脱穀選別損失が少なく、刈取り部損失はロークロップヘッダ装着時の約6%に比べリールヘッダ装着時が3%以下と少なく良好であった。作業能率は、作業面積4.5haの収穫作業で0.43ha/hであった。
  4. 循環型貯留式乾燥機および循環型乾燥機を用いなたねを火力乾燥した結果、毎時乾減率は約0.60%/hであった。乾燥では子実水分の正確な値が必要であることから、炉乾法と数種類の水分計の値と比較した結果、赤外線水分計が良い一致を示した。火力乾燥をしたなたね131俵のうち約90%の117俵が規格品であった。
  5. 栽培の年間作業時間は、ha当たり19.1時間であった。主要な作業は8月上旬から9月の中旬に集中し、その割合は62.3%を占めた。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 種子の粒径にあった播種ベルト、種子ロールを使用する。
  2. リールヘッダを装着した汎用コンバインは周速度比を1以下にして作業する。
  3. 循環型貯留式乾燥機は、なたねが床板の多孔板から抜け落ちぬよう孔径1.0mmのものに交換する。

【 具体的データ 】

表1 点播機の播種精度
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播種機 播種機の   作業速度 播種間隔 平均粒数 備 考
の種類 設定条件   (m/s)   (cm)   (粒)
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ベルト式 穴径4.0mm  0.49   10.8   2.7  粒径無選別
ロール式 非改良    1.20   11.2   4.9   〃
      穴径4.5mm  0.61   11.6   2.6   〃
        〃    0.61   12.9   2.2  粒径選
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 注)目標播種量:2粒点播;33,333本/10a、設定播種間隔:10cm


表2 なたねのコンバインの収穫
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ヘッダの種類   ロークロップ リール   リール
コンバインの型式 軸   流   型 直流型   軸流型
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作業速度 (m/s)       0.83   1.05    1.22
リール周速度比       −    1.08    0.72
刈取り高 (cm)        30    44     39
扱胴回転 (rpm)       716    210    716
穀粒流量 (㎏/h)     2,112   1,905   2,185
整粒割合 (%)     94.8   96.3    93.5
刈取り部 (%)      5.6    3.1    0.9
脱穀選別 (%)      0.6    0.9    1.1
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表3 なたねの火力乾燥
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乾燥時間 (h)           18.8    2.3
入気温度 (℃)           20.3    24.2
入気湿度 (%)        71.8   76.0
熱風温度 (℃)       39.6   45.1
穀粒温度 (℃)       24.0   28.1
張込み重 (㎏)        3,740   5,997
原料水分 (%)        19.4   11.7
容積重  (g/L)        620    635
仕上げ重 (㎏)        3,343   5.590
仕上がり (%)         8.9   10.4
容積重  (g/L)        627    655
乾減水分 (%)        10.5    1.3
毎時乾減 (%/h)       0.56   0.57
送風量  (m3/min)       96    98
風量比  (m3/s・t)      0.45   0.21
乾燥効率 (㎏[灯油]/㎏[水]) 0.07   0.07
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備 考           循環型 循環型貯留式


表4 なたねの機械化栽培技術(栽培面積:4.5ha)
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作業名   作業機名        仕様規格   作業期間  作業時間   作業能率
                                    (h/ha)  (%) (ha/h)
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耕  起 ボトムプラウ    22'×2    9/4〜9/5  2.6  13.6  0.39
石灰散布 ブロードキャスタ 散布幅:4.0m  9/13〜9/14 1.2   6.3  0.82
砕土整地 ロータリハロー  作業幅:2.4m  9/13〜9/15 3.8  19.9  0.26
施肥播種 ベルト式点播     60cm・4条   9/16,18   1.2   6.3  0.82
防除(雪腐 ブームスプレーヤ 散布幅:15.0m 11/25    0.5   2.6  1.90
融雪剤散 ブロードキャスタ        3/8〜3/9  1.6   8.4  0.64
追  肥 ブロードキャスタ        4/7〜4/8  0.7   3.7  1.50
中  耕 ロータリカルチ  60cm・4条   4/14〜4/15 2.2  11.5  0.45
防  除 ミスト機        散布幅:60m  7/14    1.0   5.2  1.00
収  穫 汎用コンバイン   刈幅:2.0m   8/2〜8/5  2.3  12.0  0.43
茎葉処理 ストロチョッパ  散布幅:2.0m  8/7     2.0  10.5  0.05
ha当たり作業時間(h/ha)                  19.1 100.0
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【 その他 】

研究課題名:なたねの品種選定・栽培法と機械科体系に関する試験
予算区分:道単
研究期間:平成2年〜5年
研究担当者:玉木哲夫・竹中秀行*・桐山優光*・桃野 寛***
     *:根釧農業試験場、**:ホクレン、***:十勝農業試験場
発表論文:なし

        「平成8年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.448