小麦遺伝資源のしょうゆ醸造適性に関する特性評価
【 要約 】 小麦遺伝資源1,927点について、主要なしょうゆ醸造関連成分とされる蛋白質含量とペントース含量を分析・評価し、データベース化した。その中から高蛋白・低ペントース含量を兼備した有用な育種母材として11点を選定した。
北海道立植物遺伝資源センター 研究部 資源利用科
資源貯蔵科
キッコーマン株式会社     研究本部
連絡先 0125-23-3192
部会名 作物 専門 遺伝資源 対象 麦類 分類 研究

【 背景・ねらい 】
 道産小麦が外国産小麦との競争に打ち勝って行くためには、めん用、パン用、しょうゆ用など用途別に優れた品質を備えた品種の開発が急務である。これらのうち、最近需要が増大しているしょうゆ用品種の開発は、これまでほとんど手掛けられていなかった。
 そこで、今後の育成場でのしょうゆ用品種育成の取組みに先立ち、しょうゆ醸造関連主要成分である蛋白質含量とペントース含量に着目して、道立農試が保存する小麦遺伝資源についてのそれら特定成分形質の評価を行い、高蛋白・低ペントース含量を兼備した育種母材を選定し、しょうゆ用高品質品種育成の推進に寄与する。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 春播1,197点、秋播730点の小麦遺伝資源について、主要なしょうゆ醸造関連成分である蛋白質含量とペントース含量を分析調査し、その結果をデータベース化した。
  2. 蛋白質含量は、品種間で極めて大きな変異が認められ、また、生産年の違いによる大きな変動も認められた。しかし、共通に供試した品種の序列には、生産年の違いによる大きな逆転が認められなかったことから、高蛋白質含量の育種母材として、春播小麦30点、秋播小麦23点をスクリーニングした。
  3. ペントース含量も、品種間で大きな変異が認められたが、生産地や生産年の違いによる変動は蛋白質含量よりも小さかった。低ペントース含量の育種母材として春播小麦22点、秋播小麦13点をスクリーニングした。
  4. 蛋白質含量及びペントース含量に特徴を有する材料7点を選び、小規模醸造試験に供試した。小麦原料の総窒素含量は生揚げしょうゆの総窒素含量との間に正の相関が認められた。また、ペントース含量は生揚げしょうゆの色番との間に負の相関が認められ、ペントース含量の高い原料ほどしょうゆの色が濃くなり、品質が劣った。
  5. 高蛋白質含量と低ペントース含量の特性を併せ備えるとともに、他の実用形質も考慮に入れて、しょうゆ用高品質小麦の品種育成に必要な育種母材と成りうる遺伝資源として春播小麦7点、秋播小麦4点を選定することができた(図1〜図4)。

【 成果の活用面・留意点 】
 しょうゆ用高品質小麦品種育成のため、遺伝資源の高蛋白質含量及び低ペントース含量に関する情報並びに育種母材を提供する。

【 その他 】

研究課題名:小麦遺伝資源のしょうゆ醸造適性に関する特性評価
予算区分 :共同
研究期間 :平成7年度(平成6年)
研究担当者:荒木和哉、渡辺喜芳、飯田修三、竹沢啓介、吉良賢二
発表論文等:なし

        「平成8年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.505