大豆のアイソザイム分析による遺伝資源評価
【 要約 】 大豆遺伝資源についてアイソザイム分析による分類の実用性及び特定のザイモグラム型が北海道適応性と関連する可能性を示した。
北海道立植物遺伝資源センター 研究部 資源貯蔵科 連絡先 0125-23-3195
部会名 基盤研究、作物 専門 遺伝資源 対象 豆類 分類 研究

【 背景・ねらい 】
 北海道で保有している大豆遺伝資源は4219点にのぼり、計画的に特性調査を実施しているが、特性の多くが複合形質であり、環境変異を伴うことから、体系的な分類・区分が難しいことが多い。このため、植物遺伝資源センターで登録・保存中の大豆遺伝資源等について、アイソザイム分析により、分子レベルから変異性・区別性に検討を加え、遺伝資源分類、評価のための手法としての有効性を探るとともに、有用形質との関連を解析することによって得られた情報を育成場に提供し、育種の効率化に資することを目的とした。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 7種の酵素のアイソザイム分析によって、ACOでは6つの型、APH及びDIAでは3つの型、ENP、EST及びPGMでは2つの型、IDHでは4つの型、LAPでは1つの型を検出した。
  2. ザイモグラムによる分類は、道内在来種140点を25系統群に分けることができ種子の可視的形質による分類と同程度に、実用性をもつと判断された。
  3. ザイモグラム型と種子形質の変異とを組み合わせることにより、道内在来種140点を66系統群に分類できた。また、80点は栽植することなく既知の品種と同じグループとして分類し、関連性を推定するための絞り込みをすることができた。
  4. 道内における純系選抜品種親子間のザイモグラム型についての相同性は酵素によってはやや低かったが、交配育成品種親子間ではザイモグラム型についての相同性は比較的高いことが示された。
  5. 登録遺伝資源1118点をザイモグラムを利用して109の系統群に分類できた。
  6. すべての酵素で北海道産と道内育成系統の遺伝資源のザイモグラム頻度が類似しており、DIA、ENP、EST及びIDHにおけるザイモグラム頻度が、北海道産及び道内育成系統と他の地域産、特に外国産との間で異なった。このことは、分子レベルからも、北海道適応性に関する遺伝変異・分化を示唆した。北海道適応性に関連する可能性があるザイモグラム型はDIA1型、ENP1型、EST2型、IDH1型であった(表1)。
  7. 登録遺伝資源について、種皮色が黄白の場合DIA1型の頻度が高かった。また、臍の色が黄あるいは極淡褐の場合もDIA1型の頻度が高かった。
  8. 有用形質とザイモグラムの関連は有用形質の特性データを十分に入手して再検討する必要がある。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 大豆遺伝資源の分類、評価、交配母本選定の参考として利用する。
  2. ザイモグラム型は明瞭なバンドのみによる判定であることを考慮したうえで利用する。

【 その他 】

研究課題名:豆類アイソザイム分析による遺伝資源評価と遺伝解析
予算区分 :道費
研究期間 :平成7年度(平成5〜7年)
研究担当者:白井滋久,白井佳代,渡辺喜芳,飯田修三
発表論文等:

        「平成8年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.506