りんご黒星病抵抗性の早生・良食味りんご品種「さんさ」
【 要約 】 「さんさ」は、収穫期が「つがる」よりやや早く、果色は美しい紅色で、甘味と酸味のバランスがよくとれた良食味品種である。樹体は小型で仕立てやすい。りんご黒星病抵抗性を有する。
北海道立中央農業試験場
北海道農業試験場
連絡先 01238(9)2001
011(851)9141
部会名 作物 専門 育種 対象 果樹類 分類 普及

【 背景・ねらい 】
 本道ではりんごの品種更新が遅れているが、一方では「ハックナイン」や「つがる」など本道特有の品種が普及してきており、本道に適応した品種への更新をさらに進めてゆく必要がある。本課題では導入品種の本道における適応性を検討し、本道の気象条件に適した優良な品種の選定をおこなった。選定された「さんさ」は、農林水産省果樹試験場盛岡支場にて、「ガラ」(種子親)×「あかね」(花粉親)より育成された。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 樹体の大きさは「つがる」よりやや小さい。発芽から開花に至るまでの生育相については、ほぼ「つがる」と同時期に経過する。収穫期については、「つがる」より若干早く、中央農試 で9月の末、余市では9月の20日過ぎが収穫期となる(表1)。
  2. 1樹あたり収量は「つがる」に比べて低い。これは「さんさ」の樹体が小さいことにもよる。果実の大きさは「つがる」と比べると小さい。着色は紅色ないし鮮紅色で、美しい色調を呈する。糖度、酸度は「つがる」より高い。硬度はこの時期の品種としては硬く、果肉がしまっている(表2)。果汁が多く、甘さと酸味の調和が良く、食味は非常に良い(表3)。貯蔵期間としては室温で2週間、冷蔵で1か月程度と考えられる。
  3. 黒星病に対して抵抗性がある。圃場での黒星病発生程度を、ここ10年間の殺菌剤散布制限下でみると病葉率および病果率はいずれもほぼ0%である(表4)。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 普及対象地域および普及見込み面積
     本道のりんご栽培地域。新植及び既存品種の代替として約100ha(りんご栽培面積の10%程度)。
  2. 栽培上の注意事項
    1. 生育が緩慢なので、栽植密度は「つがる」と同程度かやや狭くする。
    2. 枝の発生が少ないので、切り返し剪定を主体におこない枝の発生を促す。
    3. 着色が先行するが、収穫期は糖度、食味などから総合的に判断し早採りを慎む。
    4. 収穫が遅れると、果肉の軟化が進み、内部褐変も発生するので、適期収穫に努める。

【 具体的データ 】

表1 樹体生育(中央農試)と平成5〜7年の生育相と収穫期
品種 1995(10年生) 中央農試(月日) 北農試(月日) 余市(月日)
幹周(cm) 樹高(m) 樹幅(m) 発芽 満開 収穫 発芽 満開 収穫 発芽 満開 収穫
さんさ 17.7 3.2 2.3 4.24 5.31 9.26 4.2 5.28 9.27 4.21 5.25 9.23
つがる 22.1 3.5 3.2 4.25 5.3 10.2 4.2 5.26 9.29 4.2 5.24 9.25
比較   -1 1 -6 0 2 -2 1 1 -2

表2 一樹あたり積算収量と果実品質
場所 品種 積算収量
(kg)
一果重
(g)
着色
(0-10)
硬度
(ポンド)
糖度
(Brix%)
酸度
(g/100ml)
中央農試 さんさ 35.1 208 8.9 13.8 13.9 0.47
つがる 70.8 241 8.5 13.1 13.4 0.34
北農試 さんさ 68.3 207 - 14.7 13.8 0.49
つがる 88.8 247 - 13.5 13.5 0.33
余市 さんさ 60.7 279 7.3 12.2 15.3 0.46
つがる 68 304 9.1 12.4 14.6 0.36
 注)積算収量 中央農試:樹齢4〜6、8、9年生,北農試:樹齢7〜13年生,余市:樹齢5〜9年生
  一果重  中央農試  4か年の平均。北農試 6か年の平均。余市 5か年の平均。
  着 色  中央農試  4か年の平均。余市 3か年の平均
  硬度、糖度、酸度  中央農試  4か年の平均。北農試 6か年の平均。余市 3か年の平均。

表3 官能テスト(パネリスト中央農試81名)
品種 占める割合(%)
外観 食味
良+やや良 やや不良+不良 良+やや良 やや不良+不良
さんさ 60 17 92 0
つがる 73 6 74 5

表4.殺菌剤散布制限下での黒星病発病率(%)
品種 病葉率
(最低〜最高)
病果率
(最低〜最高)
さんさ 0 0
(0〜0) (0〜1)
つがる 10 37
(0〜34) (1〜90)
 注:1986〜1995年の10年間において殺菌剤散布を慣行12回に対して2回〜11回に制限した条件下

【 その他 】

研究課題名:(1)リンゴ品種比較試験(中央農試)
      (2)果樹遺伝資源の特性調査(北農試)
予算区分 :(1)道費 (2)経常
研究期間 :(1)平成7年(昭和60年〜平成7年)(2)平成7年(平成1年〜7年)
研究担当者:中央農試  村松裕司 稲川 裕  北農試 京谷英壽 工藤和典
研究論文等:なし

     平成8年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.18