生食用ブドウ品種の特性調査
【 要約 】 国内外から導入した生食用ブドウの内、北海道の露地で栽培可能な無核品種5、有核品種8の特性表を作成した。また、ハウス栽培向き品種として5品種(二倍体欧米雑種2、欧州種2、四倍体品種1)の特性を調査した。
北海道立中央農業試験場 園芸部 果樹第二科 連絡先 01238-9-2001 (273)
部会名 作物 専門 育種 対象 果樹類 分類 指導

【 背景・ねらい 】
 北海道の生食用ブドウは「キャンベル アーリー」と「デラウェア」で大部分を占めており食味、外観の向上を求める消費者ニーズに対応できない。これらに代わる品種の選定のため、昭和61年から場内および現地において適応性を検討してきた。平成3年以降は品種を絞り試験を継続し、「ノースブラック」(平成3年度成績会議)を優良品種として普及すると共に、13品種について耐寒性、熟期、生産力、果実品質などの特性を調査した。また、現地の要望の強いハウス栽培向き品種選定のため、四倍体大粒種、欧州種等の現地ハウスにおける特性を調査した。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 露地向き品種
    1. 試験に供試した61品種・系統の内、今後導入される可能性があると思われる13品種について特性表に示した。
    2. 枯死芽率、枯死樹の発生からみた耐寒性は無核品種は「ソベリンコロネイション」「ヒムロッドシードレス」が高く、有核品種では「ニューヨークマスカット」「オールウッド」「イェーツ」が高かった。
    3. 熟期は無核品種は「バネッサ」「ソベリンコロネイション」有核品種は「ニューヨークマスカット」「セネカ」などが早かった。
    4. 収量は無核品種では「ソベリンコロネイション」が多く、有核品種では「オールデン」「イェーツ」が多かった。
    5. 果粒は無核品種では「アインセットシードレス」が大きく有核品種では「オールデン」「イェーツ」が大きかった。
    6. 食味は無核品種では糖度、肉質などから「バネッサ」「アインセットシードレス」が良かった。有核品種では「イェーツ」が成熟した年は糖度が高く香りも適度であった。
    7. 「バネッサ」「アテンズ」は年により裂果が多発し、「オールデン」も裂果が発生することがあった。
    8. 以上から無核品種は「デラウェア」、有核品種は「キャンベルアーリー」を対照として特性表を作成した。
  2. ハウス向き品種
    1. 「ノースレッド」は着色が良かった。熟期、収量、果実品質などは「ポートランド」並であった。「旅路」は「バッファロー」と比較して熟期は遅かったが果実品質は同程度であった。
    2. 欧州種「リザマート」、四倍体品種「紅伊豆」は寒害は少なく、果粒が大きく、食味も良かったが裂果の発生が多かった。欧州種「バラディー」は寒害が多く発生し、熟期が遅かった。
    3. 「旅路」は「バッファロー」を、その他は「ポートランド」を対照として特性表を作成した。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 生食用ブドウ導入に当たっての資料とする。
  2. 「ソベリンコロネイション」「アイセットシードレス」は試験目的以外の販売、無償譲渡または増殖材料としての配布が制限されている。

【 具体的データ 】

第1表 特性表(露地向き品種)
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品 種 名       熟期 耐寒性 収量 果粒 食味 その他
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無核品種
バネッサ        並   弱   少  大  良  年により裂果多発
ソベリンコロネイション 並   並   多  大  不良 食味淡白、配布制限
ヒムロッドシードレス  遅   並   並  大  並  特異香、脱粒しやすい
アインセットシードレス 遅   弱   並  大  良  着色良好、配布制限
レークモント      遅   弱   並  並  不良 脱粒しやすい、はく皮難
有核品種
ニューヨークマスカット 早   並   少  小  良  マスカット香、果皮に果肉残る
セネカ         早   弱   少  小  良  特異香
アテンズ        早   弱   少  小  並  年により裂果多発、糖度低い
オールウッド      並   弱   少  小  良  フォクシー香強い
オールデン       並   弱   並  並  並  年により裂果発生
スチューベン      遅   弱   並  小  良  熟期遅い
イェーツ        遅   弱   並  並  良  熟した場合は食味良い
レッドナイアガラ    遅   弱   並  小  良  ナイヤガラと同様
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第2表 特性表(ハウス向き品種)
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品 種 名    熟期  寒害  収量 果粒 食味 その他
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旅路        遅   並   並  並  並  GA2回処理
ノースレッド    並   並   並  並  並  着色良好
紅伊豆       遅   並   多  大  良  食味良、裂果多、熟度不均一
リザマート     遅   並   多  大  良  食味良、裂果多
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 凡例 露地向き品種:無核品種はデラウェアと、有核品種はキャンベルアーリーと比較
    ハウス向き品種:旅路はバッファローと、その他はポートランドと比較
    熟期:早、並、遅  耐寒性:強、並、弱  収量:多、並、少
    果粒:大、並、小  食味 :良、並、不良 寒害:多、並、少
     (食味は糖度、酸度、果肉特性、果肉硬度、香りなどから総合的に判断)

【 その他 】

研究課題名:生食用ブドウ品種の特性調査(生食用ブドウ品種選定試験)
予算区分 :道単
研究期間 :平成7年度(平成3年〜平成7年)
研究担当者:内田 哲嗣、松井 文雄、高橋 睦
発表論文等:なし

        「平成8年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.100