侵入害虫「キンケクチブトゾウムシ」の北海道における発生実態と生活史
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【 要約 】
キンケクチブトゾウムシが道内の広範囲に侵入していることが明らかとなり年1世代の生活史を送っていることが推定された。防除薬剤の登録はないが、いくつかの処理法のそれぞれにおいて有効な薬剤が見つかった。
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北海道病害虫防除所・予察課
| 連絡先 |
01238-9-2138
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部会名 |
生産環境
| 専門 |
作物害虫
| 対象 |
花卉類
| 分類 |
指導
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【 背景・ねらい 】
北海道におけるキンケクチブトゾウムシの発生実態を明かにするとともに、発生生態および生活環を解明し、防除対策の資に供する。
【 成果の内容・特徴 】
- 1993年8月、北海道において植物検疫上の重要害虫に指定されているキンケクチブトゾウムシが発見された。現在までの発生状況は、檜山、胆振、石狩、空知、上川および十勝支庁管内の計20地点で確認され、広範囲に分布していることが明らかとなった(図ー1)。
- 発生地において成虫の食害痕(図ー2)を認めた植物は27科64種、幼虫の寄生加害を認めた植物は14科19種であった。
- 越冬は成虫および幼虫の両態で行われるが、主体は中齢〜老齢幼虫と考えられる。
- 幼虫は草本や木本などの株元土中で、成虫は落葉層下や枯草の間などに埋もれて越冬する。
- 年1世代の発生で、繁殖に好適な温度は20℃付近にあると推定された。
- 越冬幼虫の蛹化は5月上旬〜6月上旬にかけて行われ、新成虫は5月中旬〜6月下旬に出現する。新成虫の産卵前期間は約50日を要するので、産卵は7月上旬から開始され、新世代の幼虫は7月中旬頃から発生する。
- 新成虫の生存期間は著しく長く、多くの個体は2年にわたり生存を続ける。
- 越冬した成虫は5月中旬頃から産卵を開始し、その幼虫は5月下旬頃から発生する。
- 鉢植えのシクラメンやプリムラでは1株に数頭の幼虫が寄生すると根部はことごとく食害され、大きな被害を受ける。
- 幼虫に対して、各種薬剤の殺虫効果と薬剤の処理方法について検討したが、体系的な防除法を確立するには至らなかった。
【 成果の活用面・留意点 】
- 本種は流通ルートに乗りやすいシクラメン、リーガースベコニアなど鉢植えの観賞植物およびインパチェンス、サルビアなどの花壇用植物で発見頻度が高いことから、人為的に分布地域を拡大させる恐れがある。したがって、花き類の移動に当たっては、成虫の食害痕または幼虫発生の有無を予め確認するなど、分散防止に努めることが大切である。
- 本種の体系的な防除法は確立されておらず、また、登録農薬もないが、今後の防除対策の基礎的知見として有効薬剤および薬剤の処理方法は活用が可能である。
【 その他 】
研究課題名:
予算区分:植物防疫事業
研究期間:平成7年度(平成5〜7年)
研究担当者:奥山 七郎・小野寺鶴将
発表論文等:北海道におけるキンケクチブトゾウムシの発生と生態的知見北農63:161-174(1996)
「平成8年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.190