スイカの窒素吸収特性に基づく有機質肥料の肥効評価
【 要約 】 窒素無機化の速い有機質肥料は、スイカの好適窒素供給時期である定植〜果実肥大前期に十分な窒素供給が可能であり、化学肥料と同等の肥効を示し、有機質肥料主体の減化学肥料栽培が可能である。一方、窒素無機化の緩慢な有機質肥料は、同時期に窒素供給が少なく、化学肥料と併用する必要がある。
北海道原子力環境センター・農業研究科 連絡先 0135-74-3131
部会名 生産環境 専門 肥料 対象 果菜類 分類 指導

【 背景・ねらい 】
 最近の消費者ニーズに応えるため、生産者も減化学肥料栽培に意欲を示している。そこで、化学肥料を対照として、スイカに対する有機質肥料の施用効果を窒素供給面から評価し、有機質肥料の施用による減化学肥料栽培技術の確立に資する。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 供試した有機質肥料は、窒素無機化特性の違いから次のように類別される(図1)。
    1. 速やかに窒素の無機化が進むもの:魚かす、なたねかす、大豆かす。
    2. 窒素の無機化が比較的緩慢なもの:米ぬか、乾燥鶏ふん、発酵鶏ふん。
  2. スイカに対する好適窒素供給時期は、定植期〜果実肥大前期の生育前半であり、窒素供給の遅れは果実肥大を抑制し(図2)、糖度の低下や果実の変形をもたらす。
  3. 有機質肥料主体の減化学肥料栽培を行う場合、速効性の魚かす、なたねかすおよび大豆かすは、スイカに対する好適窒素供給時期である果実肥大前期までに、ほとんどの窒素が無機化されて吸収されるために、化学肥料と同等の果実収量となる(表1)。緩効性の乾燥鶏ふんおよび発酵鶏ふんは、スイカの好適窒素供給時期に窒素供給が十分でないために、化学肥料に比べ収量・糖度が低下する恐れがある。
  4. 速効性(魚かす)の有機質肥料は、圃場の窒素肥よく度を問わず、化学肥料と同等の肥効を示す(表2)。このため、速効性の有機質肥料は、窒素化学肥料の代替として使用できる。一方、緩効性(乾燥鶏ふん)の有機質肥料は、窒素肥よく度の低い圃場において、土壌および有機質肥料由来の窒素供給量が生育前半に少ないため、生育の遅延や果実収量・糖度の低下をもたらす。したがって、緩効性の有機質肥料を窒素地力の低い圃場に施用する場合、主体施用を行わず、化学肥料との併用が望ましい。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 本試験の窒素施肥量の内訳は、有機質肥料80%、化学肥料20%である。
  2. トンネル早熟栽培のスイカに適用する。
  3. 有機質肥料による減化学肥料栽培を行う場合、リン酸および交換性塩基等について土壌診断を行い、適水準を維持するようつとめる。

【 その他 】

研究課題名:スイカの品質におよぼす各種有機物の施用方法に関する試験
予算区分 :道費
研究期間 :平成7年度(平成3〜7年度)
研究担当者:小宮山誠一、山上良明、赤司和隆、熊谷秀行
発表論文等:小宮山ら:有機質肥料の窒素無機化パターンとスイカの生育・収量,日本土壌肥料学会講演要旨集,41,163(1996)
      小宮山ら:スイカ果実肥大におよぼす窒素供給時期の影響,同,41,292(1996)

        「平成8年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.324