ほうれんそうへの堆肥施用法とそれが硝酸含量に及ぼす影響
【 要約 】 一定の収穫目標日数で一定収量を得るには、堆肥を施用する場合、窒素肥料の減肥が必要である。収穫されたほうれんそうの硝酸含量は化学肥料のみで栽培されたものよりも低かった。
北海道立道南農業試験場 研究部 土壌肥料科 連絡先 0138-77-8116
部会名 生産環境 専門 肥料 対象 葉菜類 分類 指導

【 背景・ねらい 】
 有機栽培等農産物と慣行農産物のほうれんそうの品質の差異を明らかにする。堆肥施用がほうれんそうの硝酸含量に及ぼす影響を検討する。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 市販ほうれんそうを、有機栽培等農産物(有機農産物等に係わる青果物等特別表示ガイドラインの表示がされている農産物及び有機農産物または無化学肥料栽培が明記されている農産物)と非表示の慣行農産物とに分けて、硝酸・蓚酸・ビタミンC及び糖含量を比較したが、両者の差異は明らかでなかった(図1)。
  2. ほうれんそうの硝酸含量は吸収された窒素当たりの乾物生産量(窒素乾物生産効率)が高いほど低かった(図2)。
  3. 一定の収穫目標日数で一定収量を得るためには、堆肥施用条件では堆肥無施用条件よりも窒素肥料を減らす(堆肥1tにつき窒素1kg)必要がある。収穫したほうれんそうの硝酸含量は化学肥料のみで栽培されたほうれんそうよりも低かった(図3)。
  4. 堆肥施用によるほうれんそうの硝酸含量の低減効果は、土壌硝酸態窒素含量が20mgN/100g以下で大きく、20mgN/100g以上ではその効果は小さかった(表1)。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 栽培試験は堆肥を春に施用して行なったが、堆肥施用・化学肥料減肥条件で堆肥無施用・化学肥料標肥条件に比較して硝酸含量が低減した現象は、春夏まきから晩夏まきまで各作型とも認められた。
  2. ほうれんそうの硝酸含量は、土壌硝酸態窒素含量の影響を強く受け、硝酸態窒素が蓄積している条件では堆肥施用・窒素減肥によるほうれんそうの硝酸含量の低減効果も小さくなるため、ほうれんそう栽培畑では残存窒素量の低減が重要である。
  3. 供試した堆肥は牛糞バ−ク堆肥(C/N比:14〜17)であり、栽培試験はハウス内で行なった。

【 具体的データ 】

表1 ほうれんそうの硝酸含量に及ぼす堆肥施用、化学肥料減肥の影響(試算値)
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土壌硝酸態N含量(mg/100g)  0〜10mg/100g   10〜20mg/100g  20〜30mg/100g
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堆肥施用量(t/10a)     0   2   4   0   2   4   0   2   4
N吸収量(kg/10a)       5.5  5.5  4.5  6.0  6.0  5.0  5.5  5.5  5.5
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N乾物生産効率(kg/kg-N)   21.3 22.0 26.1 19.7 20.0 22.2 21.7 22.0 22.8
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堆肥施用による硝酸含量  -  17  133   -  12  119  -    7  32
の低減量(mg/100g)
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 注)試験結果に基づく試算値。ほうれんその乾物率はいずれも 8%と仮定した。
   収量はいずれも1.5t/10a程度で比較した。

【 その他 】

研究課題名 クリーン農産物の品質基準策定と評価法の確立
予算区分  道単
研究期間  平成7年度(平成5年〜7年)
研究担当者 中村 隆一・元木 征治
発表論文等 日本土壌肥料学会講演要旨集、41集、p280、1995

        「平成8年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.327