量販店との市場外流通の実態と産地対応の方向
【 要約 】 産地側が優位性を持った市場外取引を進めるためには、市場支配力を持つ基幹品目を軸にし、市場外販売の割合を適切に設定して取引先の販売動向に柔軟に対応できる体制を作ることが大切である。以上の両面において、産地間提携や農協合併などは市外取引における産地対応を容易にする方途と考えられる。
北海道立中央農業試験場経営部流通経済科 連絡先 01238-9-2001
部会名 農村計画(農業経営) 専門 経営 対象 分類 指導

【 背景・ねらい 】
 小売段階の中心となっている量販店を取引相手とする野菜の市場外移出流通並びに価格形成や産地対応の実態を把握し、市場外移出の拡大条件や産地対応のあり方を解明する。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 量販店の野菜販売・仕入れ並びに市場外取引の動向:平成3年以降の長期的な不況(バブル崩壊)の中で、量販店間の競争が激しくなり、販売・仕入れ体制の見直しと効率化が進められている。その一環として、「値頃」の安定価格で他店との差別化を図るために産直取引が増えているが、量販店側おける産直への期待は、良質品の低位安定価格での安定的な供給、差別化商品開発や流通合理化のパートナーたり得る産地探しである。
  2. 農協、青果業者における移出野菜の市場外取引の動向:移出野菜の市場外取引はばれいしょ、たまねぎの加工業者への販売が中心となってきており、依然としてこの傾向が強いが、量販店との市場外取引も増えつつある。量販店との直取引は産地青果業者が主となっており、本格的に取り組んでいる農協は数農協のみである。取引先はスーパーが多いが、生協を主とするいくつかの農協では栽培法の協議や消費地との交流が行われている。
  3. A農協における生協との市場外取引と産地対応の実態:(1)上川管内の先進的な野菜産地・A農協では生協側からの要請を契機に昭和50年代の後半から直取引を始めている。現在6生協(連合含む)との取引を行っており、品目数は10数品目に及び、数品目は出荷量の20〜30のシェアとなっている。(2)取引の方法は作付計画や作況をもとに春・夏に年間の取引契約が交わされ、これを目安に実際には週(金曜日)ごとに翌週のオーダーや価格の取り決めを行っている。代金精算や信用上から形式上はホクレンが仲介しており、契約不履行のペナルテイは設けていない。価格水準は市場価格を基準にした週間値決めが主となっているが、貯蔵品目は月決めで、一部の品目には一定の上下限の価格帯が設定されている。(3)市場外販売の価格水準はにんじんを除くほとんどの品目が市場向けの販売価格水準よりも高く(図1)、道産品の東京市場価格と比べても 10〜100%高くなっており、販売総体の価格上昇に寄与している。また販売総体の価格変動はほとんどの品目が年次別にも月別にも東京市場よりも低くなっており、レタスの事例(図2)などからみても市場外取引が価格安定に果たす役割が大きい。このような市場外取引による価格引上げや価格安定は、良質品の安定供給が基盤になっているが、基幹品目のにんじんの割安な供給によるところも大きい。つまり、にんじんの市場向け販売価格は東京市場価格よりも著しく高いが、市場外販売価格は東京市場並み(パケージ料を加えると下回る)の割安な価格水準となっている。この他市場外取引の経済的メリットとしては、販売手数料の低減があなどれない大きさとなっている。(4)契約量は変動が少ないが、実際の出荷量は生協側の追加オーダー等によって相当大きく変動している。契約量の確保と同時に追加オーダーへの一定の対応が産地の力を示すことになり、契約量は変動を見込んで低めに設定する必要がある。また規格は中心(L)規格に集中しており、ロット確保の制約になると同時に残余の市場販売の規格構成をいびつにしている。出荷のピーク期対応を考慮すると市場外販売割合は低めに設定する必要があろう。

【 成果の活用面・留意点 】
 生協を取引先とする事例が中心となっており、取引条件がより厳しい場合が多いスーパーとの直取引の実態が明らかになっていない点に留意する必要がある。

【 その他 】

研究課題名:量販店との市場外流通の実態と産地対応の方向
予算区分 :道 費
研究期間 :平成5〜7年
研究担当者:中央農試、経営部流通経済科、荻間 昇

        「平成8年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.491