ペレニアルライグラス集約放牧草地のシロクローバを維持するための窒素施肥法
【 要約 】 ペレニアルライグラスとシロクローバ(中葉型)の混播集約放牧草地では、窒素施肥法の不適からシロクローバ混生割合が低い。収量性を保ちながら、この割合を20%以上に維持するためには、10a当たり3kgの窒素を6月中〜下旬に1回施用する必要がある。
北海道立天北農業試験場・研究部・土壌肥料科 連絡先 01634-2-2111
部会名 草地・畜産、生産環境 専門 土壌肥料 対象 牧草類 分類 指導

【 背景・ねらい 】
 天北地方においては、高栄養価で嗜好性も良く、また秋の生産性も良好なペレニアルライグラスを用いた集約放牧技術が導入され、ペレニアルライグラスを基幹とした集約放牧草地の面積が急増している。しかし、混播したシロクローバの混生割合が低い。そこで、収量性を保ちながら、この割合を高く維持するための施肥法を検討する必要がある。

【 成果の内容・特徴 】

  • 天北地方のペレニアルライグラス集約放牧草地のシロクローバ混生割合は、冠部被度10%以下の草地が42%を占めるなど低いが(表1)、これには窒素施肥法の不適が推測される。
  • ペレニアルライグラスと混播するシロクローバのタイプは、放牧牛の採食によるランナー損傷が少なく収量も多い中葉型(コモン型)が、大葉型(ラジノ型)よりも適している。
  • シロクローバ混生割合を20%以上に維持するには、窒素施用量を10a当たり3kg以下にする必要がある(図1)。
  • 年間の乾物収量はペレニアルライグラスの収量に主に支配される(図1)。10a当たり3kg以上の窒素施用により、ペレニアルライグラスの収量は比較的高く維持される。3kgの窒素施用では、6または8月施用が4月施用より効果が高い。これは4月施用の窒素吸収量が低いことが一因である。また、10a当たり3kg窒素の6月施用ではシロクローバ収量が高いため、合計収量も10a当たり9kgの窒素施用と同様に高い値を示す。
  • 放牧牛の採食量は、10a当たり3kg窒素の6月施用と6kg窒素の均等分施(4、6、8月、慣行)との間で大きな差がない(表2)。
  • リン酸、加里(いずれも10a当たり12kg)を10a当たり3kgの窒素とともに6月に1回全量施用した場合でも、収量や両養分の牧草体含有率は、リン酸・加里の均等分施(3回)と大差がない(表3)。
  • 以上の結果、ペレニアルライグラス集約放牧草地で収量性を保ちながら、シロクローバ(中葉型)混生割合を20%以上に維持するためには、10a当たり3kgの窒素を6月中〜下旬に1回施用する必要がある。なお、リン酸、加里は施肥標準量を同時に施用する。

    【 成果の活用面・留意点 】

    1. 洪積土および沖積土に適用する。
    2. リン酸、加里の施用量は施肥標準(天北地方の洪積および沖積土壌ではいずれも10a当たり8kg)に準じるが、牧草への過剰害をさけるため、土壌診断を定期的に行う。

    【 その他 】

    研究課題名:ペレニアルライグラス集約放牧草地におけるマメ科牧草を維持するための窒素施肥法(ペレニアルライグラス集約放牧草地の施肥法確立)
    予算区分 :道費
    研究期間 :平成7年度(平成3〜7年)
    研究担当者:三木直倫・小宮山 誠一・松中 照夫・木曽 誠二
    発表論文等:三木直倫・松原 一實(1992)、ペレニアルライグラス集約放牧草地のN施肥管理とマメ科草混生率の関係、土肥講演要旨集第38集.

            「平成8年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.329