アバディーンアンガスとヘレフォードの直接検定法の効率化と発育能力の改良効果
【 要約 】 アンガスとヘレフォードの直接検定を112日間に短縮化できることを示した。検定牛の発育能力に関する遺伝的能力が年々高くなっていることを示した。陰嚢周囲が直接検定牛の繁殖性改良指標として有効であることを示した。
北海道立新得畜産試験場・家畜部・肉牛育種科 連絡先 01566-4-5321
部会名 畜産・草地 専門 育種 対象 家畜類 分類 指導

【 背景・ねらい 】
 道内の肉牛生産は黒毛和種へのシフトが続いているが、発育能力に優れるアンガスとヘレフォードは産直方式や交雑利用等において一定の評価を得ている。このため両品種の種雄牛生産を存続させるために効率的検定法の確立が必要である。また両品種の繁殖形態はまき牛方式が一般的であり種雄牛の繁殖能力の改良指標の検討が必要である。  この試験ではアンガスとヘレフォードの直接検定の効率化と発育能力の改良効果を検討し、繁殖能力改良指標としての陰嚢周囲の有効性について検討した。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 直接検定法の効率化の検討
    1. 検定期間の短縮化
       112日間と140日間の日増体量(DG)の間には高い遺伝相関と表型相関が認められ、検定期間を短縮化することが可能であることを示した(表1)。
    2. 飼料給与法の改良
       コンピューター自動給餌機を用いた省力的検定システムを確立した。また配合飼料の設定量を代謝体重比で行うと検定開始時体重とDGとの相関関係が認められなくなりDGの比較がより公平に行えることを示した(表2)。
  2. 発育能力の改良効果の検討
    1. 検定成績の遺伝的特性
       12カ月体高と体型得点の遺伝率は高かった。365日体重、検定中DGおよびTDN要求量の遺伝率は中程度の値であった(表3)。
    2. 検定成績の遺伝的改良傾向
       発育能力に関する平均育種価は全ての形質で年々高くなっていることが確認された。365日体重の遺伝的改良量は1.75kg/年と2.47kg/年であった(図1)。検定の結果223頭(選抜率50%)を選抜した。
  3. 繁殖性改良指標としての陰嚢周囲
     陰嚢周囲の発育曲線を作成し標準発育値を設定した(図2)。365日補正陰嚢周囲の遺伝率は高くまた精液の活力との相関関係も認められたことから繁殖性改良のための直接検定牛の選抜指標として有効であることを示した。

【 成果の活用面・留意点 】
 陰嚢発育値が下限以下の雄牛は他の発育形質が優れていても種雄候補牛として選定すべきではない。

【 具体的データ 】

表1 112日と140日のDGの遺伝的パラメーター
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  日増体量 DG112  DG140
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   DG112   0.32  0.91
   DG140   0.89  0.35
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 対角:遺伝率、対角上:遺伝相関係数
 対角下:表型相関係数



表2 検定開始時体重とDGとの間の相関係数
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配合飼料の設定   頭数 相関係数
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体重比  (82-92年) 381  0.29**
代謝体重比(93-94年) 66  0.02N.S.
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  **:P<0.01, N.S.:有意差なし



              表3 検定成績の遺伝的パラメーター
    ----------------------------------------------------------------
     検定成績  365日体重 12カ月体高 体型得点 検定中DG TDN要求量
    ----------------------------------------------------------------
     365日体重   0.50   0.57   0.11   0.46   0.08
     12カ月体高   0.46   0.81   0.52   0.09   -0.13
     体型得点   0.30   0.48   0.69   -0.26   0.31
     検定中DG   0.53   0.16   0.19   0.35   -0.78
     TDN要求量  -0.14   0.05   0.01   -0.81   0.44
    ----------------------------------------------------------------
      対角:遺伝率、対角上:遺伝相関係数、対角下:表型相関係数

【 その他 】

研究課題名:アンガス・ヘレフォードの直接検定法の効率化と発育能力の改良効果
予算区分:道費
研究期間:平成7年度(平成3年〜7年)
研究担当者:藤川朗・荘司勇・酒井稔史・宝寄山裕直・佐々木千里・川崎勉・田村千秋
発表論文等:Fujikawa, A. and C.Tamura: Genetic Parameter Estimates of Absolute and Relative Growth Rate for 140 and 112 Days in a Bull Test of Aberdeen Angus  and Hereford. Bull. Shintoku Anim. Husb. Exp.Stn., 18:1-11(1991)

        「平成8年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.394