双子羊早期出荷のための舎飼い肥育技術 | |||||||
【 要約 】 舎飼いを前提として、新生子羊の吸乳行動、3〜4か月齢子羊の消化能力および群飼における子羊の管理法を検討し、双子羊を4か月齢で出荷体重に到達させる技術を開発した。 | |||||||
北海道立滝川畜産試験場・研究部・めん羊科 | 連絡先 | 0125-28-2211 | |||||
部会名 | 畜産・草地(畜産) | 専門 | 飼育管理 | 対象 | 家畜類 | 分類 | 指導 |
【 背景・ねらい 】
生産現場では、子羊は体重43〜53kgでラムとして出荷されている。サフォークの単子の場合は4か月齢で出荷が可能になる。しかし、サフォークの平均産子数は1.8頭で、双子の割合が高い。また、双子は単子に比べ増体が劣るので、出荷体重に到達するのは6〜8か月齢という現状にある。そこで、ラムの需要時期や他の農作業等の関係から、子羊を飼育する期間を短くしラム出荷を早期化したいという要望が強くなってきている。本成績では、舎飼いを前提とし、双子羊を4か月齢で出荷体重に到達させる技術を検討した。
【 成果の内容・特徴 】
1. 新生子羊のうち50%程度は生後1時間以内に母羊からの吸乳に成功するが、2時間以上経過しても吸乳できない個体もいる。
2.-1 3か月齢以降の子羊では、固形飼料の消化率は成羊にほぼ近い。
2.-2 哺乳子羊に給与する濃厚飼料を、60日齢頃に人工乳から配合飼料に替えても増体に影響はない。
3.-1 子羊間の日齢の違いが20日間程度あっても、群を構成する子羊の平均日齢が50日齢以降に給餌器の間口幅を十分にとれば、子羊の増体に採食競合などによる大きな影響はない。
3.-2 単子・双子混在群では、70日齢以降にクリープフィーディングする人工乳の給与量を1日1頭当たり原物で1kg程度とすると、比較的斉一に出荷体重に到達する(表1)。
3.-3 通常の4か月齢離乳に対し、3か月齢で離乳しても子羊の増体に大きな影響はない。2か月齢で離乳すると直後に増体は低下するが、4か月齢時体重は雌でも40kg程度になる(表1)。
4. 単子授乳羊と双子授乳羊を別飼いし、哺乳子羊に給与する濃厚飼料を60日齢頃に人工乳から配合飼料に替えることにより、双子では4か月齢時に、単子では3か月齢時に出荷体重に到達する。また、双子のうち体重の大きいほうを60日齢で離乳すると、出荷体重のばらつきが小さくなる(表1)。
5. 双子授乳羊を別飼いし群飼する条件下において、双子羊を4か月齢で出荷体重(43〜53kg)に到達させるためのモデルを作成した(図1)。
【 成果の活用面・留意点 】
【 具体的データ 】
表1 供試子羊の4か月齢時体重 ----------------------------------------------------------------------- 試験 処理 体重(平均値±標準偏差)、kg ----------------------------------------------------------------------- 3)-2 人工乳給与量1.2kg 単子:55.9±3.1 双子:54.1±6.8 人工乳給与量0.6kg 単子:52.9±0.3 双子:42.6±7.3 3)-3 4か月齢離乳 雄:50.2±3.1 雌:44.6±2.9 3か月齢離乳 雄:51.1±5.3 雌:41.5±4.0 2か月齢離乳 雄:45.9±4.5 雌:39.6±4.6 4) 双子のまま授乳させた子羊 (雄雌込み) 51.2±7.3 双子の片方の授乳させた子羊 (雄雌込み) 52.4±2.7 双子の片方の離乳した子羊 (雄雌込み) 50.0±4.2 単子のまま授乳させた子羊 (雄雌込み) 45.6±3.7 [3か月齢時] ----------------------------------------------------------------------- [群平均日齢] 0 30 60 90 120日 +----+----+----+----+----+----+----+----+----+----+----+----+ [体重の目安] 5 15 30 40 50kg [子羊のクリープフィーディング(原物kg/頭/日)] 乾 草 +-- 0.2 --+---- 0.4 -----+---- 0.8 -----+---- 1.2 -----+ 人 工 乳(1) +--0.2(2)-+-0.4+ 0.6+0.8-+(3) | 配合飼料(1) +------------ 1.0 ------------+ [母羊の養分摂取量(kg, g/頭/日)] TDN +-------- 1.5〜1.7kg ---------+-------- 1.2〜1.4kg ---------+ CP +-------- 360〜380g ---------+-------- 240〜260g ---------+ 図1 双子羊早期出荷のための舎飼い肥育モデルおよび母羊の養分摂取量 (1)本成績で用いたものの表示成分量は以下のとおりである。 人 工 乳:TDN75%以上、CP20%以上 配合飼料:TDN70%以上、CP18%以上 (2)子羊の摂取状況により加減する。 (3)60日齢前後に人工乳から配合飼料に徐々に切り替える。
【 その他 】
研究課題名:低月齢大型ラムの効率的生産技術の確立
予算区分 :道費
研究期間 :平成7年度 (平成4年〜6年)
研究担当者:出岡謙太郎、斉藤利朗
発表論文等: