サフォ−ク母羊を用いたF1ラム肉生産の効率化
【 要約 】 サフォ−ク母羊から生産されるF1雄子羊を舎飼ラム肥育する場合、産肉効率ではポ−ルド−セットとのF1、肉質ではサウスダウンとのF1の利用が有利である。
北海道立滝川畜産試験場・研究部・めん羊科 連絡先 0125-28-2211
部会名 畜産・草地(畜産) 専門 飼育管理 対象 家畜類 分類 指導

【 背景・ねらい 】
 濃厚飼料主体の舎飼肥育によるラム肉生産の条件に適した、サフォ−ク(以下S)を母羊とするF1の組合せを選定するため、ポ−ルド−セット(以下P)、サウスダウン(以下D)、チェビオット(以下C)の雄羊との交配によって得られるF1子羊(以下PS、DS、CS)の発育特性およびF1雄子羊の産肉特性を明らかにする。

【 成果の内容・特徴 】

  1. F1子羊の発育特性(表1)では、F1子羊の育成率はいずれもSを上回った。発育ではPSがSより優れており、DSは総じてS程度、CSはやや劣った。
  2. F1雄子羊の舎飼肥育における増体、飼料要求率(表2)は、CSがSに比べて有意に劣った。PSの増体はSと大差なかったが、要求率ではSを上回る傾向にあった。
  3. 肥育後の枝肉成績(表3)では、DSがSに比べ枝肉に占める脂肪割合が高く、骨割合が低かった。肥育前後の枝肉成績から枝肉構成の変化をみると、枝肉の増加量はDSが大きくPSはSと変わらなかった。脂肪の増加量はDSが大きかった。一方、正肉の増加量で高い値を示したCSは、肥育日数が長いために産肉効率では劣り、濃厚飼料主体の舎飼肥育には適さないと考えられた。
    赤肉の理化学性状および官能検査結果では、PSは赤肉のクッキングロスが少なく、官能検査からも多汁性の点でSより優ると評価された。DSは赤肉にも脂肪を多く含みテクスチャ−特性において硬さ、凝集性、ガム性、いずれも低い値を示し、官能検査でも適度に柔らかく、総合評価はSより高かった。
  4. F1雄子羊によるラム肉の生産効率を試算した(表4)。S母羊100頭からの雄子羊肉の総生産量は、正肉量ではPSとDSは1.3tで差がなく、いずれもSより多かった。TDN1kg摂取当りの生産量では、枝肉、正肉いずれもPSが高い値となり、DSはSとほぼ同じ量であった。

【 成果の活用面・留意点 】
 農家の保有するS雌羊群にP、Dの種雄羊を供給、交配することにより、効率の良いラム生産が期待できる。

【 具体的データ 】

  表4 F1雄子羊によるラム肉の生産効率の試算(S母羊100頭当り)
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                 S     PS    DS    CS
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  雄子羊離乳頭数    (頭)   82     86     86     88
  肥育開始(90日齢)体重 (kg)   32.7    34.8    32.4    30.7
  肥育終了体重     (kg)   50.0    50.0    50.0    50.0
  肥 育 日 数     (日)   82     70     85     166
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  枝肉総生産量     (t)    1.8     1.9     2.0     2.0
  正肉総生産量     (t)    1.2     1.3     1.3     1.4
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  TDN1kg摂取当り枝肉生産量(kg)  0.27    0.33    0.26    0.17
  TDN1kg摂取当り正肉生産量(kg)  0.17    0.22    0.17    0.12
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【 その他 】

研究課題名:交雑利用による地域特産ラムの生産方式に関する試験
予算区分 :道  費
研究期間 :平成2〜6年
研究担当者:戸苅 哲郎、宮崎 元、出岡謙太郎、山内和律、斉藤利朗、寒河江洋一郎

        「平成8年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.400