北海道における豚のHaemophilus parasuis感染症の実態解明と診断技術の開発
【 要約 】 北海道内の養豚場におけるHaemophilus parasuis(Hps)の浸潤状況を調査し、分離株の血清型の比率が道外での報告と異なっていることを示した。また分離した病原性株を用いて、交差免疫防御について解析した。さらに、ELISA法を応用したHpsの迅速検出法を開発した。
北海道立滝川畜産試験場 研究部 衛生科
酪農学園大学 獣医学部 獣医伝染病学教室
連絡先 0125-28-2211
011-386-1112
部会名 畜産・草地 専門 診断予防 対象 家畜類 分類 指導

【 背景・ねらい 】
 Haemophilus parasuis(Hps)は、Hps陰性のSPF豚に初感染するとしばしば致死的な病原性を示すため、SPF豚の普及上、注意すべき疾病となっており、その予防法の確立が急がれている。そこで本研究では、Hps感染症の予防法確立に向けて、これまで調査が行われたことがない北海道内の養豚場におけるHps浸潤の実態を明らかにするとともに、不活化ワクチンによる交差防御について検討した。また、Hpsの同定検査の簡易化・迅速化をはかるため、免疫学的な手法を応用した同定法の開発を行った。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 見かけ上健康豚の鼻腔スワブからの菌分離により、北海道内の15養豚場のうち13場でHpsの浸潤が確認された。分離株の血清型(1〜7型)では型別不能株が最多で、次いで1型2型が多かった。しかし、道外で高率に分離される5型は検出されなかった(表1)。
  2. 発症豚の病変から、国内での報告が少ないPAGEI型血清型2型株、同血清型7型株を分離し(表2)、さらにこれらの株が致死的な病原性を有することを明らかにした(表3)。
  3. 血清型2、5および7型株の間で、ホルマリン不活化菌体の免疫により交差防御が認められたが、5型株で免疫し2型株で攻撃した場合に、交差防御の程度が弱いことを明らかにした(表4)。
  4. Hpsで免疫した豚の血清を用いて、Hpsの抗原をウェスタンブロッティングにより解析したところ、57kDa、41kDa、32kDa、18kDaおよび15kDa付近のバンドが検出され、主要な抗原であると考えられた。しかし、PAGE型のマーカーバンドは検出されず、抗原として認識されていないことが明らかになった。
  5. 純培養した菌株により調製した菌液をセルロースアセテート膜にスポットし(菌液スポット法)、血清型5または6型株で免疫したウサギ血清を一次血清に用いたELISAにより血清型1〜6型の野外Hps株を効率よく検出・同定できることを明らかにした(図1)。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 本試験で明らかにされた以外にも病原性株が存在する可能性が考えられるので、発病豚から分離したHpsについてはPAGE型・血清型を決定し、菌株を保存しておくことが望ましい。
  2. 現時点におけるHps感染症の予防・治療法は、平成6年度成績書「コンベンショナル養豚場におけるSPF種豚の導入技術」を参照のこと。

    【 その他 】

    研究課題名:豚のHaemophilus parasuis感染症の発病機構の解明
    予算区分: 共同研究(大学)
    研究期間: 平成7年度(平成5年〜7年)
    研究担当者:仙名和浩、及川学、米道裕彌、平棟孝志

            「平成8年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.415