【 背景・ねらい 】
　本道酪農がガットウルグアイラウンドの合意による輸入自由化後も生き残るためには、牛乳生産コストの70%を占める飼料費の削減が必要である。
　本試験は、主要な採草用草種であるチモシーおよびアカクローバの新品種について早刈りを中心とした刈取りスケジュール別にTDN含量および採食量を明らかにし、家畜の、牧草からのTDN摂取量を高め、濃厚飼料の削減に寄与しようというものである。

【 成果の内容・特徴 】

1. T&T法によるin vitro乾物消化率(IVDMD)を用いてTDN含量の推定式を作成した(図1)。

   　　　　　チモシー　　 TDN(DM%)=0.99IVDMD-0.85　　n=18　r= 0.94　s.e=2.39
   　　　　　マメ科　　　 TDN(DM%)=0.79IVDMD+8.68　　n=10　r= 0.94　s.e=1.82

2. 乳牛によるDMIの相対的な評価に利用するために、Ob(難消化性繊維分画)を指標としたチモシーのDMI推定式を作成した(図2)。

   　　　　　チモシー　　DMI(g/kg0.75)=-1.28Ob+126.8　　n=24　r=-0.91　s.e=5.86

3. めん羊による飽食条件下での消化試験では、同じTDN含量で比較すると2番草のDMIが1番草より低下するという傾向は認められなかった(図3)。
4. チモシー「キリタップ」、「ノサップ」およびアカクローバ「ホクセキ」についての早刈りを中心とした刈取りスケジュールモデル別に、TDN収量を推定した。さらに、「ノサップ」と「キリタップ」について採食量を推定し、スケジュール別に草地の必要面積と濃厚飼料の必要量を「ノサップ」の出穂期刈りに対する指数で示した。草地面積指数と濃厚飼料指数は、各刈取りスケジュールにおいて牧草からの乾物摂取量を最大限高めたときに必要とされる草地面積とそのときに濃厚飼料がどの程度まで削減可能かを示すものである。
5. 耐倒伏性に優れる品種を含むチモシー早生品種の成分含量およびIVDMDに品種間で大きな差は認められなかったことから「ノサップ」の刈取りスケジュールは他の早生品種にも適用できる。

【 成果の活用面・留意点 】

1. 経営形態により刈取りスケジュールを選択できる。
2. チモシーの単播草地およびアカクローバとの混播草地に活用できる。
3. 早刈りした翌年は標準刈りに戻すこと。
4. 2番草刈取時期に高温旱ばつが予想されるときは、チモシーの3番草の再生が劣ることがあるので、2番草40日刈りは避ける。
5. 本成績は十勝地域および牧草の生育の類似する地域に適用する。

【 具体的データ 】

　　　　　　　 表2　チモシー「キリタップ」の刈取りスケジュール
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　　　　　　　　　　　　　　　TDN含量　　 年間　　　　　　　　　　 草地　 濃厚
　刈取りスケジュール　　　　　 (DM%)　　 TDN収量　　 DMI指数　　面積　 飼料
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1番草　2番草 3番草　　　　1番 2番 3番　(kg/10a)　1番　2番　3番　 指数　 指数
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穂ばらみ 40日 10/中旬　　　　　　67　70　　654　　　　 1.24 1.28　 1.16　 0.80
　　　　　　　　　　　　　　 69　　　　　　　　　 1.14
(6/19)　 50日　　〃　　　　　　　65　71　　673　　　　 1.10 1.37　 1.11　 0.87
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出穂始　 40日 10/中旬　　　　　　66　71　　736　　　　 1.17 1.35　 0.90　 1.01
　　　　　　　　　　　　　　 65　　　　　　　　　 0.99
(6/28)　 50日　　〃　　　　　　　61　70　　783　　　　 1.04 1.36　 0.82　 1.06
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出穂期　 50日　　−　　　　　　　56　 -　　697　　　　 0.93　 -　　0.78　 1.25
　　　　　　　　　　　　　　 64　　　　　　　　　 0.92
(7/ 4)　 60日　　−　　　　　　　57　 -　　755　　　　 0.98　 -　　0.73　 1.23
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チモシー「ノサップ」 出穂期刈スケジュールでの値
(6/22)　 50日 10/中旬　　　　65　64　73　　659　　(59) 1.07 1.27　 1.00　 1.00
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刈取りスケジュールは1番草が生育ステージ、2番草が生育日数で示した。

DMI指数は「ノサップ」1番草出穂期刈りの値を1.00として算出、( )内の数値は実数を示した。

草地面積および濃厚飼料の指数は「ノサップ」出穂期-50日-10/中旬のスケジュールでの必要量を1.00としたときの家畜1頭あたりの必要量を示す。

【 その他 】

研究課題名：牧草・とうもろこし新優良品種の栄養価特性の解明
予算区分　：道費
研究期間　：平成3年〜7年
研究担当者：出口健三郎、佐竹芳世、堤光昭、田村忠、澤田嘉昭(現根釧農試)、佐藤尚親(現天北農試)
発表論文等：

• 1番草および再生草におけるチモシー生草の成分含量とTDNとの関係、日草誌41別、(1994)
• チモシーおよびマメ科牧草の成分含量とめん羊による自由採食量の関係、日草誌、第51回大会発表予定、(1996)
• in vitro乾物消化率を用いたマメ科およびイネ科牧草のTDN含量の推定、北草研報、30掲載予定、(1996)