道央・道南地域における芝草の用途別利用技術
|
【 要約 】
道央地域91カ所の芝生を調査し、鑑賞芝、利用芝、保護芝、ゴルフ場のそれぞれについて利用状況と利用上の問題点を明らかにした。そのうえで、12草種・118品種の寒地型芝草について道央地域における適応性を調査し、各草種の長所、短所および品種選定のポイントを明らかにした。またスタンドの確立が早く、永続性の高い芝生の混播組み合わせを明らかにした。
|
北海道立滝川畜産試験場・研究部・草地飼料作物科
| 連絡先 |
0125-28-2211
|
部会名 |
畜産・草地
| 専門 |
栽培
| 対象 |
牧草類
| 分類 |
指導
|
【 背景・ねらい 】
芝地は身近な緑の資源として、家庭や庭園等の鑑賞芝、公園やキャンプ場および競技場などの利用芝、河川敷や道路のり面等の保護芝、そしてゴルフ場まで人間生活に深く結びつきつつ広い用途がある。また、芝草の生産は北海道においても農業の一分野として大きなウエートを占めつつある。そこで本試験では芝草利用の実態調査から問題点を抽出し、利用目的にあった北海道向きの草種・品種を選定するとともに、利用芝・鑑賞芝のための混播組み合わせ法を明らかにした。
【 成果の内容・特徴 】
- 芝草の利用実態調査
道央地域91箇所の芝生利用状況を調査した。
- 観賞芝は、半数以上が造園業者等に管理が委託され、おおむね良好に維持されていた。使用草種はケンタッキーブルーグラス(KB)が主体であった。
- 利用芝は、用途によって管理状態が異なった。公園等の芝生は、KBが主体で、造成後の 管理により雑草が侵入し裸地が広がったところが多かった。また、地域によって越冬性 に弱点のあるペレニアルライグラス(PR)が全道一律に利用されており、指導指針等の改 善の必要があった。競技場や多目的広場の芝生は、密度も高く良好に管理されていた。 キャンプ場の芝生は、耐踏圧性が強いとの理由でクリーピングレッドフェスク(CRF)が 混播されていたが、全般に裸地が多く芝生の景観は良くなかった。
- ゴルフ場は、刈取り回数は特にグリーンで多く、殺菌剤の使用頻度も高かった。芝生管理技術は最高水準にあったが、少ない技術情報に頼っていた。
- 保護芝は、のり面保護が主目的で、使用草種はトールフェスク(TF)が主体であった。一部に裸地割合が高く、土壌保全機能に不安のある所があった。
- 芝草の草種・品種の選定
- 12草種・118品種の5カ年にわたる特性調査から、各草種の長所、短所、および品種選定のポイントを明らかにした(表1)。
- 鑑賞芝では、庭園芝は芝の密度が高く景観の美しいベントグラス(BG)、家庭芝は観賞用の場合はBG、利用の機会が多い場合は永続性の高いKBが適すると考えられた。
- 利用芝では、公園は物理的ストレスに強く景観が美しいKBやPR、キャンプ場や競技場は物理的ストレスに強いTF、また景観を考慮する場合はKBが適すると考えられた。
- 保護芝では、環境ストレスに強いTF、KBが適すると考えられた。
- 芝草の混播組合せ法
- 鑑賞芝、利用芝の望ましい混播組み合わせとしてKB+PR、KB+BG、の2通りが挙げられた(表2)。
- KB+BGの組み合わせはスタンドの確立がきわめて早く、密度が高いので早期から利用が可能である。播種重量割合はKB:BG=9:1程度が望ましいと考えられた(図1)。
- KB+PRの組み合わせはスタンドの確立がやや早く、KB:PR=7:3〜9:1の播種割合でKB割合の高い芝生が出来た(図1)。
【 成果の活用面・留意点 】
- 本試験は、道央・道南地域の芝草生産農家や芝生管理者が参考資料として活用出来る。
- 地域に適する草種・品種を選定するため、公園や緑地造成の指導指針等の見直しが必要である。
【 その他 】
研究課題名:農村緑地における芝草の用途別利用技術の開発
予算区分 :道費
研究期間 :平成4年度〜平成7年度
研究担当者:田川雅一、北守 勉、坂口雅己、佐藤尚親、井内浩幸
発表論文等:
「平成8年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.432