搾乳自動離脱装置の作動特性
【 要約 】 ミルカにおける搾乳自動離脱装置の搾乳終了時の離脱時の牛乳流量を高精度に測定するための流量自動制御装置を開発した。流量のセンシング方式の違いによる検知精度の傾向を明らかにした。搾乳終了時の流量のばらつきが自動離脱装置の点検基準の指標となることがわかった。
北海道立根釧農業試験場・研究部・酪農施設科 連絡先 01537-2-2004
部会名 農村計画(農業物理) 専門 機械、農業施設 対象 乳用牛 分類 指導

【 背景・ねらい 】
 搾乳労働の軽減や過搾乳防止を目的に、クラスタ自動離脱装置が普及しているが,離脱条件と個体ごとの泌乳速度との関連性については明確ではない。そのため,現場ではミルカと異銘柄の離脱装置を使用する例があり,混乱を招いている。このような混乱を解消するためには自動離脱装置の作動特性を明らかにしなければならない。汎用的な点検機械は開発されておらず、自動離脱装置の作動特性を明らかにするためにはその点検システムから新たに開発する必要があった。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 牛乳流量を制御して、「離脱時の流量」を把握するため、電子式サーボアクチュエータと電磁流量計をデジタル指示調節計を介して、コンピュータと接続し、流量制御を行うシステムを開発した(図1)。流量制御用ソフトウェアはあらかじめ流量曲線を入力しておけば、動的な設定流量を再現できる。設定流量と実際流量との差は小さく、統計的にも有意差(5%)はなかった(図2)。ソフトウェアは、流量計測も可能で、制御可能な牛乳流量は0〜4.0 l/minである。本システムで自動離脱装置の搾乳終了時の流量を高精度に測定できることがわかった。
  2. 電気伝導度を直接、離脱時の流量検出に用いている方式では、同一乳汁に対する作動流量のばらつきは小さいが、乳汁が変わる(電気伝導度が変わる)と設定値との差が変化しやすかった。光学式などのように乳汁通過間隔により、離脱のタイミングを決めている機種ではセンサ部の流れの状況が変化しやすいため、誤差が大きくなる傾向があった。搾乳終了時の設定流量が0.3l/min以下の機種では変動係数が大きくなる機種もあった(図3)。パーラ用の容積式では設定値に対する誤差、ばらつきとも15%以下であった。
  3. 「離脱時の流量」のばらつきが大きいと、同一の牛であっても毎回の搾乳時に終了する流量が異なることになるため、今後、自動離脱装置の点検時には「離脱時の流量」のばらつきをチェックポイントとして利用できる。また、開発したシステムを用いることで、その設定値の確認、変動状況が把握できる。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 従来、試験装置がなかった搾乳自動離脱装置の点検方法として、本試験で製作した流量制御システムは十分利用可能である。機種によってはアルカリ水溶液で計測可能なものもある。
  2. 終了時の流量の測定値のばらつきは自動離脱装置の性能を把握する上で重要な項目の一つであり、点検基準を策定する上での指標となる。

【 その他 】

研究課題名:搾乳自動離脱装置の作動特性
予算区分 :受託
研究期間 :平成7年度(平成6年〜7年)
研究担当者:稲野一郎・高橋圭二・竹中秀行・原 令幸
発表論文等:なし

        「平成8年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.442