根釧地域における高泌乳牛を対象にした昼夜放牧技術の経営経済的評価
【 要約 】 放牧飼養経営は通年舎飼経営より省力化および所得向上の視点からみて高い経営経済的効果が期待できる。放牧飼養経営のなかでも1日 4.5時間の時間制限放牧技術より1日15時間の昼夜放牧技術を採用した方が一層高い効果が得られる。
北海道立根釧農業試験場・研究部・経営科 連絡先 01537-2-2004
部会名 農村計画(農業経営) 専門 経営 対象 酪農 分類 指導

【 背景・ねらい 】
 乳生産の国際競争力が問われるなかで、低コスト化、省力化が期待される放牧利用への関心が高まってきた。ここでは高泌乳牛の年間産乳量8,550kg(初産牛を除くと9,000kg)を対象に開発した昼夜放牧(1日15時間放牧)技術の経営経済的効果を明らかにする。

【 成果の内容・特徴 】
 昼夜放牧技術の経営経済的評価をするために、経産牛飼養頭数規模50頭、スタンチョン飼養を共通とした、つぎの三つの経営モデルを構築して比較分析した。

  • 標準的放牧経営モデル:地域の標準的な放牧(1日4.5時間)飼養経営。
  • 通年舎飼経営モデル :標準的経営モデルを通年舎飼とした経営。
  • 集約放牧経営モデル :標準的経営モデルに実証試験と既往の成果による昼夜放牧技術を導入した経営。
    1. 放牧期(5月下旬〜10月中旬)の所要労働時間は昼夜放牧経営が2,116時間であり、地域の標準的な放牧経営より9%、通年舎飼経営より15%少なく省力的であった(図1)。
    2. 昼夜放牧経営の農業所得額は 1,299万円であり、地域の標準的な放牧経営に対して9.7%、通年舎飼経営に対しては 11.8%増加した(表1)。
    3. 家族労働10時間当たり農業所得額は昼夜放牧経営が26,656円であり、地域の標準的な放牧経営に対して11.5 %、通年舎飼経営に対しては13.5%増加した。
    4. 草地10a当たり農業所得額は昼夜放牧経営が21,538円であり、地域の標準的な放牧経営に対して 7.4%多かったが、通年舎飼経営よりは3.9%少なかった。
    5. 自給飼料畑の10a当たりの生産原価は、昼夜放牧経営が17,786円であり、地域の標準的な放牧経営より4.8%、通年舎飼経営より14.5%低コストであった(表2)。
    6. 牛乳 100kg当たりの生産原価は、昼夜放牧経営が 5,666円であり、地域の標準的な放牧経営より4.9%、通年舎飼経営より5.8%低コストであった(表3)。

    【 成果の活用面・留意点 】

    1. 根釧地域におけるスタンチョン飼養で、経産牛40〜60頭規模の放牧飼養経営を主たる対象とする。
    2. 根釧地域における高泌乳牛の昼夜放牧技術(平成6年度:根釧農試)を遵守する。

    【 その他 】

    研究課題名:放牧を効率的に利用した低コスト牛乳生産技術の実証
    予算区分 :国費補助
    研究期間 :平成7年度(平成3〜6年)
    研究担当者:前川 奨、花田正明、小関忠雄、藤田眞美子、扇 勉、酒井 治、浦谷孝義、金子 剛
    発表論文等:

            「平成8年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.488