カラマツチップの暗渠疎水材への適応性
【 要約 】 カラマツ木材チップは暗渠疎水材として適した資材である。従来のモミガラ疎水材に比べて排水性に優れており、耐久年数は畑条件下でも10年以上である。作物や環境への影響はない。
北海道立中央農業試験場農業土木部生産基盤科 連絡先 01238-9-2001
部会名 生産環境 専門 農地整備 対象 分類 指導

【 背景・ねらい 】
 暗渠の疎水材及び被覆材としてモミガラ、砂利、稲ワラ、麦稈等が使用されているが地域によっては容易に資材が得られない場合がある。そこで、本試験では各地域で生産されているカラマツチップの暗渠疎水材としての適応性について検討する。

【 成果の内容・特徴 】

  1. カラマツチップの性状
     カラマツチップはモミガラに比べ、粗大な間隙が多く、透水性も10-2cm/sオーダーで良好で圧縮に強い。カラマツチップの主成分は糖類とリグニンで抽出液も主成分が糖で環境や作物に影響はない。
  2. カラマツチップの排水性
     水田の落水時と降水時に排水量調査を行った結果、カラマツチップ疎水材暗渠はモミガラ疎水材に比べて排水量、排水時間ともに良好であることが確認された。圃場の乾きも良好であった。
  3. カラマツチップの耐久性
     カラマツチップの耐久性は施工後5年経過以降に細粒化等の物理的変化が認められたものの、畑地条件下でも10年以上は疎水材としての機能を持続していた。また、水田ではさらに耐久年数が伸びると考えられた。これは、物理性(細粒化)、化学性(リグニン量の変化)、細胞的側面から5年程度で約30%、10年程度で40%台の分解が進むことから明らかになった。また、腐朽の進行も年々遅くなることから、耐久年数は予想より長くなると考えられる。これはカラマツチップ疎水材の特徴である。
  4. 農作物、環境への影響調査
     カラマツチップ疎水材による作物生育、収量に及ぼす悪影響は認められなかった。また暗渠の排水からはフェノール等の有害物質は検出されなかった。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 疎水材の埋設深は耕起深(水田15cm畑30cm)を考慮に入れ掘削されないよう設計すること。樹皮付きチップについては今後検討を要する。

【 具体的データ 】

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      原 料  富良野   富良野  長 沼   長沼溝下部
          8カ月経過 1年経過  5年経過  6年経過
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リグニン   25.56   28.44   30.11   36.87   33.61
灰分     0.11   0.55   0.41   4.20   2.49
C/N     1619    620    553    203    174
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         原 料 1年目 6年目 11年目
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細胞壁の面積率(%) 75.9  66.9  51.4  40.1
対原料比(%)    100.0  88.2  67.7  52.9
崩壊率(%)      0.0  11.8  32.3  47.1
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【 その他 】

研究課題名:カラマツチップの暗渠疎水材への適応性
予算区分:道単
研究期間:平成6年度(平成5年〜6年)
研究担当者:北川巌、横井義雄、前田要
発表論文等:なし

        「平成8年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.319