打音解析による貯蔵中のメロン果肉硬度の評価法
【 要約 】 メロン果実の打音から得られた波形を高速フーリエ変換し、固有振動数を求めたところ、果肉の硬さとに高い相関関係が認められる。固有振動数190以上の果実は硬く、150〜180は適食、150以下は軟化気味の果実である。
北海道立中央農業試験場・農産化学部・流通貯蔵科 連絡先 01238-9-2001(内線254)
部会名 流通利用 専門 加工利用 対象 メロン 分類 指導

【 背景・ねらい 】
 メロン果実は特に品質が重要視される果菜類の一つであり、出荷時には厳しい検査が行なわれている。近年生産地からの要望として、簡易で客観的判定に基づくメロン果実の非破壊的評価が求められている。そこで、非破壊的手法である打音解析による果実の果肉の硬さの評価について検討を行なった。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 打音波形解析には、その波形がどのような周波数の波から合成されているのかを分解して解析する高速フーリエ変換を用いた。‘キングナイン’果実において、貯蔵6日目の打音波形は貯蔵0日に比べて周期が長くなるため(第2図)、周波数が低くなった。その結果、高速フーリエ変換処理後のパワースペクトルでは、6日目は0日目と比べて全体的に低周波側にシフトし(第3図)、ピーク周波数は200から150へと低くなった。
  2. 果実の大きさがピーク周波数に及ぼす影響を補正するため、果実重量の三乗根をピーク周波数に乗じ、固有振動数値を求めた。次に、果肉の硬さに関与する成分であるペクチン質と固有振動数値について検討した。ペクチン質は果肉の軟化に伴い、塩酸可溶性ペクチンは減少し、その結果 HSP/TSPの割合が減少した。このことから、固有振動数値とに高い相関関係が認められ(第4図)、固有振動数値は肉質の硬さを反映していることが示唆された。
  3. 固有振動数値と果肉硬度の関係については、1.5kg/cm2 以上の果実硬度と固有振動数値に相関関係を認めたが、1.5kg/cm2 以下の果実では判然としなかった(第5図)。食味では、190 以上の果実は硬く、150〜180 は適食で、150 以下は軟化気味の肉質であった。以上から、打音解析によって得られた固有振動数値は品種間差も小さいことから、メロンの果肉硬度の指標の可能性が考えられた。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 本成果はキングナイン果実に適用する。

【 その他 】

研究課題名:北海道・東北地域における高品質メロンの機械化・軽作業化による省力安定生産
予算区分 :地域重要
研究期間 :平成5年〜7年
研究担当者:長尾明宣
発表論文等:長尾明宣、黒沢正明、北海道園芸研究談話会、1995

        「平成8年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.321