パソコンによる土壌診断、施肥設計システム(Ver2)
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【 要約 】
パソコンで動く土壌診断、施肥設計ソフトを作成した。従来に比べて対応機種が多く処理速度や操作性が改善されている。本ソフトは全作物を対象とし、各種演算を行い帳票に出力する機能を有する他、採取地点の管理機能も有している。
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北海道立中央農業試験場・環境化学部・土壌資源科
| 連絡先 |
01238-9-2001
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部会名 |
生産環境
| 専門 |
情報管理
| 対象 |
| 分類 |
指導
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【 背景・ねらい 】
従来の土壌診断・施肥設計システムは機種が限定され処理速度も遅く、一般のパソコンで利用可能な、より使い易いものが現場から要望されている。そこで、最新のパソコンに対応し、また最新の研究成果を取り込んだものを作成することとした。診断・設計の演算論理は踏襲して最新の成果も加え、地点位置情報管理システム等のサブシステムを付加し総合的に処理速度や使い易さが向上したものを作成することとする。
【 成果の内容・特徴 】
- 「北海道施肥標準」、「土壌及び作物栄養の診断基準」、「土壌診断に基づく施肥対応」および関連する指導参考事項をファイル化し、演算論理を作成し診断要素量を算出し、出力できる。
- 分析値などの入力項目は、出力のため演算に最小限必要なものにとどめ、すべての作目に対応可能な統一様式とし、表形式又は個票形式で入力する。表計算ソフトでデータの一括入出力が可能。これによりデータのグラフ化、統計処理等が可能となる。
- 診断要素量を充足する土壌改良資材、単肥、化成肥料の種類および量を出力する。また任意の要素量(N、P、K、Mg)のみを入力することにより単肥・化成の肥料銘柄を自動的に選択出力するシステム(単肥・化成選択システム)を利用できる。
- 施肥設計票は畑作物、野菜、水稲、草地を対象とし「土壌診断に基づく施肥対応」の基準に従い診断施肥量を算出する。「施肥対応」に記載のない作物は施肥基準値のみを出力する。ただしこの場合も有機物施用による診断施肥量の補正を行うことが出来る。
- システムが持つファイル(施肥標準、施肥倍率、診断基準値、地帯区分等)の大部分は利用者による変更が可能である。
- 1/25,000又は1/50,000地形図を用いて、採取地点位置を記録・保管し、ほ場データと連結するシステム(地点位置情報管理システム)を利用できる。
- 地点位置情報管理システムにより任意項目についてのランキング表示ができ、地区全体の地力実態の把握が視覚的に可能である。
【 成果の活用面・留意点 】
- 携帯用を含むパソコン(ウインドウズが稼動するもの)全機種で利用でき、現場における活用場面が広がる。
- 分析値、診断施肥量をデータベースとして有効利用するためには、一筆毎の圃場が判別可能な圃場台帳を整備し、台帳上の圃場番号と本システムの圃場番号を一致させることが必要である。
- 肥料など資材の選択に当たっては、技術的合理性と地域の流通・使用実態を勘案し関係者と協議の上登録(入力)すること。
- 地域特有の技術情報は取り入れていないので、作成された診断票、設計票は内容を確認し、農家指導の資料とすること。
【 具体的データ 】
- システムの概要図 略
- 分析・ほ場情報入力項目一覧
土壌分析値
PH、EC、CaO、MgO、K2O、トルオーグP、ブレイP、熱抽N、無機N、培養N、酢酸ケイ酸、培養ケイ酸CEC、りん吸、容積重 :以上は数値入力
土壌の種類、土性、腐植、溶脱係数:以上はコード番号を入力
ほ場情報
ファイルNO、土壌採取年月日、サンプルNO、農家番号、ほ場NO、予定作物コード、有機物コード(最大3種)、有機物施用量:すべて数値あるいはコード番号を入力
- 土壌診断改良資材算出の演算対象
PH:資材量算出(水稲以外)、CaO:診断のみ、MgO:資材量算出
K2O:診断のみ、リン酸:資材量算出(草地以外)、ケイ酸:資材量算出(水稲のみ)
EC:床土のみ診断
- Nに関する施肥設計演算論理の概要
N診断施肥量の算出方法は「施肥標準量×施肥倍率−有機物N換算量」を原則としているが、作目、作物により細かな論理は異なる。
水稲:一部の地域、土壌では培養Nより計算。復元田対応や3種の施肥法(全層、側条、二段)により演算法や出力例が異なる。
畑作:一部の作物(土壌限定)では熱抽Nより計算。対象作物以外に常に主要10作物について診断施肥量を出す。
園芸:一部の作物では熱抽Nより計算。
草地:ほ場来歴、草種構成等より計算。
- 地点位置情報管理システムの機能
検索表示:全地点表示、指定地点の表示、複合検索(農家、土壌、作物)による表示
ランキング表示:対象項目に条件設定し、ランキング(色分け)表示、凡例自動表示
【 その他 】
研究課題名:クリーン農業支援のための土壌診断システムの高度化
予算区分:道単
研究期間:平成7年度(平成4年〜7年)
研究担当者:橋本 均
発表論文等:なし
「平成8年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.354