北海道耕地土壌の理化学性の実態・変化の状況
【 要約 】 土壌環境基礎調査・定点調査の調査結果をとりまとめて北海道耕地土壌の理化学性の実態・変化の方向を検討すると、各地目でリン酸・カリ等の蓄積が見られるが、カリは近年適正化の方向にあり、また苦土や石灰、ケイ酸は近年減少している。物理性では畑土壌の作土厚が増加し、心土が堅密化している。
北海道立中央農業試験場・環境化学部・土壌資源科
ほか道立各農試・土壌肥料部門各科
連絡先 01238-9-2001
部会名 生産環境 専門 土壌 対象 分類 指導

【 背景・ねらい 】
 昭和54年から全道1260地点で継続調査を行っている「土壌環境基礎調査・定点調査」について、第3巡目(〜平成4年)までの調査成績についてとりまとめ、北海道の農耕地土壌の理化学性の実態、変化の方向を明らかとして、適正な土壌環境の維持に役立てる。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 土壌理化学性の実態・変化の方向(表1)
    水田 全炭素・全窒素・可給態窒素は一時期顕著に減少したが、その後全窒素・可給態窒素は増加している。カリ・苦土・リン酸は、昭和60年まで著しく増加し、カリ・リン酸はその後も蓄積傾向にあるが、苦土は逆に減少している。ケイ酸・石灰は近年減少している。
    普通畑 作土厚は全期間を通して増加しているが、心土の孔隙率は減少しており、心土の堅密化の傾向が認められる。全炭素・全窒素・可給態窒素は一時期顕著に減少したが、近年可給態窒素は増加している。カリ・苦土・リン酸は昭和60年まで著しく増加し、リン酸は依然蓄積傾向にあるが、カリ・苦土は減少している。石灰は近年顕著に減少している。
    草地 全炭素・全窒素ともに増加し、また可給態窒素は一時期明らかに減少したが、その後増加している。カリ・苦土・リン酸は昭和60年まで著しく増加し、リン酸はその後も蓄積傾向にあるが、苦土は減少している。
  2. 土壌診断基準および施肥対応の観点からみた変化の方向の評価(表2)
    水田 カリ・リン酸は近年やや蓄積傾向にあり、また苦土は依然としてほぼ施肥不要であるものの、近年減少傾向にある。ケイ酸は一時期適正化の方向にあったが、近年やや減少している。
    普通畑 カリ・苦土は蓄積が進行していたが、カリは近年適正化の方向に向かいつつあり、また苦土は近年減少している。リン酸はやや蓄積傾向にある。
    草地 リン酸は蓄積が進行している。カリは基準値以上・以下に2極分化しているが、近年やや減少傾向にある。苦土は蓄積が進行していたが、近年減少傾向にある。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 本成果は北海道全域の農耕地の理化学性の現況や動向を把握する上で有効である。ただし、個々の圃場の実態については個別の土壌診断によって対応する必要がある。

【 その他 】

研究課題名:土壌環境基礎調査・定点調査
予算区分 :補助(土壌保全)
研究期間 :平成7年度(昭和54年〜 )
研究担当者:安積 大・橋本 均 ほか各農試土壌肥料部門各科試験担当者
発表論文等:な し

        「平成8年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.359