近赤外分光法によるトマトの内部品質の測定法
【 要約 】 反射型の近赤外分光分析装置によるトマトの糖度の測定は果皮色a* 値が 0〜16の果実を対象とすることで±0.4%以内の精度で測定できる。一方、トマトの酸度の測定は、熟度、品種などを揃えても誤差が大きく、実用上精度不足と判断された。
北海道立道南農業試験場 研究部 土壌肥料科 連絡先 0138-77-8116
部会名 流通利用 専門 加工利用 対象 果菜類 分類 研究

【 背景・ねらい 】
 高糖度トマトの選別と市場出荷を想定し、近赤外分光分析装置によるトマトの内部品質(糖度・酸度)の非破壊測定を行う際の留意点を明らかにする。

【 成果の内容・特徴 】

  1. トマト果実の表皮部と果実内部(隔壁部・子室部)とで、糖度及び酸度に差が認められるが、品種及び色彩色差計で測定した果皮色のa* 値(赤味度)を揃えることで果皮部と果実内部の糖度・酸度の差に一定の傾向が認められる。
  2. 糖度は、果皮部で果実内部に比較して低いが、その差は、果皮色のa* 値の増加とともに縮小する。1994年に収穫した果皮色のa* 値が 0〜16のトマトを対象に糖度の検量線を作成し、この検量線で1995年に収穫した果皮色のa* 値が 0〜16のトマトの糖度を測定した結果、推定誤差±0.4% (相対誤差 8%)の精度で測定ができた。
  3. 供試した6品種の糖度に、4.3〜5.5%までの品種間差が認められた。また、1991年に市販のトマトの品質事例を調査した結果、4.8〜7.3%の差が認められている。このため、集出荷段階で近赤外分光分析装置を用いることで高糖度トマトを選別し、消費者に提供することは可能と考えられる。
  4. トマトの酸度は子室部で果皮部に比較して明らかに高いこと、近赤外線が到達できるのは果皮表面から10mm程度であるが、果皮の厚さは4〜6mm程度であり、近赤外スペクトルに対する影響は果皮部で果実内部(隔壁部・子室部)に比較して大きいため、果皮色のa* 値及び果実重量を揃えても化学的定量値に比較して、推定誤差±0.1%(相対誤差16%)の検量線しか作成できず、実用的選別機への応用は不可能と判断される。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 本試験には、ハウス桃太郎、桃太郎、まごころ、強力旭光、マルチファ−スト、ファ−ストカスタム502の6品種を供試した。栽培試験は農試圃場で行い、1〜5段までを測定に供試した。
  2. 本成果は、近赤外分光分析装置(ブランルーベ社インフラライザー500型+光ファイバーアタッチメント プローブ型)のユーザーに提供できる。

【 具体的データ 】

表1 近赤外分光分析装置によるトマトの糖度の推定
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 波長数 重相関係数 検量線誤差
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  1    0.718    0.64
  2    0.815    0.54
  3    0.858    0.48
  4    0.879    0.45
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表2 近赤外分光分析装置によるトマトの酸度の推定
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 波長数 重相関係数 検量線誤差
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  1    0.538   0.14
  2    0.763   0.11
  3    0.831   0.10
  4    0.893   0.08
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【 その他 】

研究課題名 クリーン農産物の品質基準策定と評価法の確立
予算区分  道単
研究期間  平成7年度(平成5年〜7年)
研究担当者 中村 隆一・元木 征治
発表論文等 日本土壌肥料学会北海道支部大会、1995年12月

        「平成8年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.508