テンサイそう根病の系統識別と抵抗性品種の有効利用
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【 要約 】
テンサイそう根病ウイルスのF型系統は、N型系統より病原性が強く、道内に広く分布している。てんさい栽培跡地の解析から、抵抗性品種による土壌の発病抑制効果は認められないので、より長期なそう根病対策と発病圃の拡大防止策が必要である。
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北海道立中央農業試験場・生物工学部・遺伝子工学科
北海道立北見農業試験場・研究部・作物科
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01238-9-2001 0157-47-2146
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部会名 |
基盤研究
| 専門 |
作物病害
| 対象 |
工芸作物類
| 分類 |
指導
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【 背景・ねらい 】
[背景・ねらい]
てんさいの品種にウイルスを接種して病徴、被害、ウイルスの移行・増殖について解析し、品種のウイルス抵抗性の機作を明らかにする。また、N型系統とF型系統の病原性の違いを解析し、系統の分布を詳細に調べる。さらに、抵抗性品種を連作して抵抗性品種栽培による発病抑制効果があるかどうかを調べるとともに、精度の高い抵抗性品種検定の方法を検討する。
【 成果の内容・特徴 】
- 内部欠失変異株を用いたウイルス接種検定の結果、品種のウイルス抵抗性の発現または誘導には、ウイルスRNA-3のコードする25kの蛋白質が関与していると考えられた。
- ウイルスを接種して主根のウイルス濃度を調べた結果、抵抗性品種「リゾール」では、罹病性品種に比べてウイルス検出率・濃度が低く、ウイルスの移行が遅かった。
- 接種試験では、F型系統はN型系統に比べて病原性が強く、枯死する個体が多かった。抵抗性品種「リゾール」は、F型系統に対してもある程度の抵抗性を示した。また、RNA-5はRNA-3とは異なる病原性をもち、「リゾール」はこれらのRNAに対して異なる反応を示した。
- 道内各地のそう根病発病圃場から合計264点の土壌を採取し、149点の土壌からウイルスを分離した。RT-PCR法により検定した結果、73分離株がN型系統、76分離株がF型系統であった。F型系統の分布に顕著な地域差は認められなかった。
- 発病圃場に抵抗性品種と罹病性品種を6年間連作した結果、抵抗性品種と罹病性品種との収量の差が広がる傾向はなく、抵抗性品種栽培による発病の抑制効果は認められなかった。
- 紙筒育苗期のてんさい苗にウイルスを遊走子接種して健全圃場に移植し、収穫期にウイルス濃度を調べた結果、ウイルス検出率・濃度からみたウイルス抵抗性の程度が、発病圃場における移植栽培での各品種のウイルス抵抗性の程度と一致したので、遊走子接種が抵抗性検定あるいは系統の選抜に利用できると考えられた。
【 成果の活用面・留意点 】
- テンサイそう根病ウイルスのF型系統(RNA-1+2+3+4+5)は、N型系統(RNA-1+2+3+4)より病原性が強く、道内の主要なてんさい栽培地帯に広く分布していることが明らかになった。
- 抵抗性品種栽培による土壌の発病抑制効果は認められないので、そう根病対策として、より長期な対策と発病圃の拡大防止に留意する。
- 接種によりウイルスを確実に感染させ、抵抗性検定の精度を上げることができるので、遊走子接種法を育成系統のテンサイそう根病抵抗性の選抜に利用することができる。
平成8年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分
課題名:テンサイそう根病の系統識別と抵抗性品種の有効利用(指導参考)
【 その他 】
研究課題名:テンサイそう根病の系統識別と抵抗性品種の有効利用に関する試験、
てん菜品種のそう根病ウイルス抵抗性機構の解明試験、
てんさいそう根病抵抗性品種検定試験、
てんさいそう根病特性検定試験、
先端技術開発研究、作物ウイルス病の防除技術開発
予 算 区 分 :受託、補助指定、道費
研 究 期 間 :平成8年度(平成3〜8年)
研究担当者:齊藤美奈子・楠目俊三・玉田哲男・紙谷元一・古谷ちひろ・木口忠彦・梶山努・奥村理・大波正寿
発表論文等:玉田哲男・楠目俊三・齊藤美奈子、テンサイそう根病抵抗性はBNYVV RNA-3によって決定される、日本植物病理学会報、58:638-639 (1992)(講要)
「平成9年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.38