ごぼうの加工用途向け栽培法の確立
【 要約 】 加工用の短根ごぼう栽培には、収量性・加工適性の点で早生長根種の“常豊”が適している。耕起深度は部分深耕ロータリによる50cm程度とし、株間は8cmを標準とする。窒素施肥量は肥沃土の低い火山性土でも18kg/10aで十分である。カットごぼう(サラダ用)に求められる硬さ・歯ざわりをクリアするためには、最低でも120日、一般には150日以上の生育日数が必要である。
北海道立十勝農業試験場・研究部・園芸科 連絡先 0155-62-2431
部会名 作物 専門 栽培 対象 根菜類 分類 指導

【 背景・ねらい 】
 加工用原料としてのごぼうは、カット時の歩留まり、製品としての品質に問題がなければ、必ずしも青果用のような長根である必要はなく、肥大性に優れた早生種を用いて、根長50cm程度の円筒形にすることが望ましいのではないかという発想から短根ごぼうの栽培について検討を行った。

【 成果の内容・特徴 】
 耕起深度を浅くして、短根ごぼうを作ることのメリットしては、(1)下層に物理性・化学性に不良な土壌がある圃場でもごぼう栽培が可能となる (2)耕起深度が浅いために、耕起後の豪雨による溝の陥没が起こりにくい (3)部分深耕ロータリを使用した場合の作業速度は慣行のトレンチャによる100cmの耕起深度の時に比較すると早くなる(農試の比較では約5倍) (4)根の先端部における乾物率が高く、品質面でのばらつきが小さい、などの点をあげることができる。本試験では、さらに、ごぼうの短根栽培の試験結果から以下のような結論を得た。

  1. 短根ごぼう栽培には長根種のごぼうを使用した方が収量性・加工適性に優れており、「常豊」が有望である(表1)。
  2. トレンチャあるいは部分深耕ロータリによる耕起深度を50cmにすると、太くて短い円筒形の短根ごぼうとなるが、耕起深度を浅くしても収量的には耕起深度が100cmの場合とかわらない(図1)。
  3. 株間がせまくなるほど収量は高くなるが、カットごぼう用の原料として大株とするのであれば株間は8cmが標準的である。しかし、肥沃度の高い圃場や充分な生育日数を確保できる場合は、7cmあるいは6cmとすることも可能である。
  4. 肥沃度の低い火山性土でも18kg/10aの窒素施肥量で高い収量を示し、株間にかかわらずこれ以上の窒素施肥による増収効果はない(図2)。
  5. 硬さ・歯ざわりが要求されるカットごぼう(サラダ用)としての基準をクリアするには、生育日数は最低で120日、府県産並みの評価を得るには150日は必要である。
  6. 短根ごぼうと青果用の長根ごぼうの加工歩留まりを実際の加工工場で比較した結果、根重が同じであれば、最終的な歩留まりは同程度である(表2)。
  7. 短根栽培の場合は、耕起深度が浅いために硬盤層に張った分岐根のせいで、特に、土壌水分の多いときや圃場に凹凸のある場所では、ルートディガではごぼうが浮き上がらずに残ってしまう場合がある。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 青果用のような長根ではなく、短根ごぼうとしてごぼうを太く・短く作る場合の栽培法の指針となる。
 ・平成8年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分
  課題名:ごぼうの加工用途向け栽培法の確立(指導参考)

【 その他 】

研究課題名:ごぼうの加工用途向け栽培法の確立
予算区分:共同(民間)
研究期間:平成8年度(平5〜8年)
研究担当者:西田忠志・日下孝人・越智弘明
発表論文等:なし

        「平成9年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.55