りんご「ハックナイン」における生産安定のための樹形改造
【 要約 】 樹勢の強くなったM26台「ハックナイン」を主幹形から開心形に樹形改造することにより、果実の成熟がやや早まり青実の発生がやや減少した。また年次による気象変動に対しても安定した花芽数を確保することができ、生産安定対策の一つとして利用できる。
北海道立中央農業試験場・果樹部・果樹第一科 連絡先 01238(9)2001
部会名 作物 専門 栽培 対象 果樹類 分類 指導

【 背景・ねらい 】
「ハックナイン」は多汁性で甘酸適和した食味の品種として育成され、本格的な栽培が始まってから平成8年で10年目を迎える。「ハックナイン」は生育が旺盛なため、樹勢の強い樹では、成木期になると光線透過が不良となり、青実の多発や果実の着色不良等を生じ、問題となってきている。主幹形はわい化栽培に適した樹形として導入されたが、全国的にも「ふじ」など樹勢の  強い品種では、光線の透過が不良となる例が多くなっている。そこで、樹勢が強くなった「ハックナイン」の生産安定対策の一つとして、主幹形から樹冠上部からの光線透過が良い開心形への改造について検討し、改造による効果および改造の過程で生ずる問題点を明らかにする。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 改造中、主枝候補枝の先端が上がらず、主枝候補枝の背面に出た枝に主枝延長枝を切り替える必要があった。また改造中の樹勢安定化のため無施肥と夏期剪定を行う必要があった(図1)。
  2. 幹周増加量は、改造区では、樹齢が進むにつれ減少する傾向を示し、対照区に比べ安定する傾向が認められた。
  3. 改造区では、4×4mに間伐した後も樹冠は拡大し、列間での枝の交差が認められるようになった。このため栽植距離として列間、樹間とも4m以上が必要と考えられた。
  4. 頂芽数は、改造区で対照区に比べ多く、樹齢が進むにつれその差は大きくなった。頂花芽数は、平成4年及び平成6年以降、改造区で多かった(図2)。
  5. 地色は、変則主幹形から開心形に移行する平成6,7年に、改造区で対照区に比べやや高い値を示し、果実の成熟がやや早まる傾向が認められた。青実率は、平成8年に改造区で対照区に比べやや低い値を示した。これらは開心形への樹形改造により樹勢が安定しつつあることが影響し  たと考えられた(図3、表1)。
  6. 果実の着色、糖度、酸度、硬度及び他の果実品質については、年次による変動があるものの、区間に大きな差は認められなかった。

【 成果の活用面・留意点 】
 生産安定のため「ハックナイン」の樹形を主幹形から改造する際の資料とする。
 改造に伴う強剪定により樹勢が強くならないよう、樹勢をみながら施肥制限、夏期剪定等を行う。

平成8年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分
課題名:リンゴ「ハックナイン」における生産安定のための樹形改造(指導参考)

【 その他 】

研究課題名:リンゴ新品種の栽培法確立
予算区分:道 費
研究期間:平成8年度(平成元〜8年)
研究担当者:稲川 裕・渡辺 久昭・村松 裕司・小賀野隆一・吉田昌幸
発表論文等:なし

        「平成9年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.67