北海道産小豆の品質特性と種皮色区分
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【 要約 】
道産小豆と中国産小豆の間には、種皮色、煮熟特性、タンパク質のポリペプチド組成、煮熟臭強度、香気成分等の特性で差が認められる。色調に基づく2次元座標の種皮色区分は、品種・年次・産地等による差異を把握する上で有用であり、生産現場から流通・加工にいたる多方面で活用できる。
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北海道立中央農業試験場・農産化学部・品質評価科
| 連絡先 |
01238-9-2001
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部会名 |
流通利用
| 専門 |
加工利用
| 対象 |
豆類
| 分類 |
指導
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【 背景・ねらい 】
道産小豆と中国産小豆の品質特性に関して、外観形質並びに成分組成等の差異について検討を行う。また、流通上最も重視されている外観品質の一つである種皮色の表示法を検討し、色彩色差計による測定値を基に、明度および彩度を座標軸とした2次元の色調空間による種皮色区分を作成する。
【 成果の内容・特徴 】
- 道産小豆と中国産小豆の種皮色には明らかな差異が認められ、a*値(赤味度)およびb*値(黄味度)でその差が大きい。一般成分については、両者の間に大きな差は認められない。煮熟特性については、主要道産品種の「エリモショウズ」では中国産小豆よりも煮熟増加比が大きく、あん収率も高い傾向にある(図1)。
- 抽出色素の吸光度には、年次や栽培地等の栽培環境による影響が大きいが、中国産小豆の中にはクロロフィルと想定される663nmのピークが認められる品種もある
(表1)。
- デンプンの糊化特性は品種よりも栽培環境による変動が大きいが、αアミラーゼ活性には品種による差異が認められる。また、タンパク質のポリペプチド組成には、道産小豆と中国産小豆の間で差異が認められ、道産小豆の中でも遺伝的背景の異なる品種では一部に差が認められる(表2)。
- ニオイセンサによる煮熟臭強度は、中国産小豆よりも道産小豆が高い傾向にあるが、その差はわずかである。また、香気成分のガスクロマトグラムには品種間で違いがみられ、中国産小豆との間にも差異が認められる。
- 中国産小豆との差異が明瞭であった種皮色に関して、生産から加工までの多方面で広く利用し得る、色調に基づく2次元座標の種皮色区分を作成した(図2)。本区分は、道産小豆と中国産小豆の種皮色を識別する上でも有用である(図3)。
- 本区分を用いて品種・年次・栽培地による種皮色の差が区別できる。年次または栽培地による変動は、明度方向で大きく、彩度方向では比較的小さい(図4)。
【 成果の活用面・留意点 】
- 道産小豆と中国産小豆の間で認められた成分的な差異は、両者を識別する上での一手段となり得る。
- 色調(L*値およびC*値)に基づく種皮色区分は、品種間、年次間または産地間の差異を識別する上で活用できる。品種の特性を把握するためには、本区分に色相(H")の値を括弧で補助的に併用することが望ましい。
平成8年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分
課題名:北海道産小豆の品質特性と種皮色区分(指導参考)
【 その他 】
研究課題名:豆類の加工適性向上試験 1.アン用豆類の食味変動要因解析試験
予算区分:道費(豆基)
研究期間:平成8年度(平成4〜7年)
研究担当者:加藤 淳・目黒孝司
発表論文等:加藤 淳・目黒孝司(1997):北海道産小豆および中国産小豆の品質特性
日本食品科学工学会第44回大会講演集
「平成9年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.257