道央火山性畑土壌の微生物活性(α-グルコシダ-ゼ活性)標準値と向上方策
【 要約 】 畑土壌における微生物活性の一指標であるα-グルコシダ-ゼ活性の標準値を道央の火山放出物未熟土では250〜450、黒色火山性土では400〜600(pmol・g−1・min−1)と設定した。微生物活性向上方策として有機物連用および保水性向上資材の施用が有効である。
北海道立中央農業試験場・環境化学部・土壌生態科
北海道立十勝農業試験場・研究部・土壌肥料科
北海道立中央農業試験場・農業土木部・生産基盤科
連絡先 01238-9-2001
部会名 生産環境 専門 土壌 対象 分類 指導

【 背景・ねらい 】
 道央火山性畑土壌における微生物活性(α-グルコシダ-ゼ活性)の実態とその規制要因を明らかにし、α-グルコシダ-ゼ活性の標準値を設定する。併せて今後の微生物活性向上方策に向けた基礎的知見を得る。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 千歳、追分、早来など広範囲に分布する樽前系火山放出物未熟土のα-グルコシダ-ゼ活性(pmol ・g−1・min−1)の平均は240〜280、恵庭市周辺の黒色火山性土が400台であった。これらの値は十勝中央部の褐色火山性土の平均604および黒色火山性土の平均624に比べかなり低い(表1)。
  2. 上記の道央火山性土壌では微生物基質である易分解性炭素量そのものが少なく、かつ易分解性炭素量あたりのα-グルコシダ-ゼ活性(比活性)の低いことが低活性の一要因である(表2)。
  3. 道央火山性土壌は粗粒であり、気相率が高く、かつ保水性が小さいことから、微生物に対して適当な生息条件を欠くと推測される。火山放出物未熟土においてパ−ライト(30%添加)、ベントナイト(2%添加)等の資材施用はα-グルコシダ-ゼ活性を高める(表3)。
  4. α-グルコシダ-ゼ活性の圃場実態、主な化学性診断基準の下限値、気相率診断基準の上限値(25%)、比較的安定して得られたてんさい収量との関係(図1)等に基づいて、α-グルコシダ-ゼ活性の標準値を火山放出物未熟土250〜450、黒色火山性土400〜600と設定した。
  5. 標準値に達しない圃場の多くは、土性が粗く粘土含量が少ないこと、粗孔隙の過大有機物 施用量の不足、低pH、りん酸、苦土、石灰等の不足が問題点として挙げられこれらの改善が必要である。火山放出物未熟土における有機物を用いた微生物活性向上方策としては、圃場造成後、バ−ク堆肥を初年目に一度に8〜16t多量施用するよりも、2〜4tを毎年連用するほうが効果が大きい(図2)。さらに物理的な環境条件の整備として、上記3)による保水性向 上資材の施用が有効である。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 標準値の適用範囲は、道央に分布する火山放出物未熟土、黒色火山性土である。
 平成8年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分
 課題名:道央火山性畑土壌における微生物活性(α-グルコシダ-ゼ活性)の実態と標準値(指導参考)

【 その他 】

研究課題名:持続的高生産基盤整備技術確立調査
予算区分:道費
研究期間:平成8年度(平成7〜8年)
研究担当者:奥村正敏・美濃健一・三木直倫・鈴木慶次郎・山神正弘・北川巌
発表論文等:道央火山性畑土壌における微生物活性の実態、日本土壌肥料学会北海道支部会要旨(1996)

        「平成9年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.270