給餌方式および夜間点灯がめん羊の分娩時刻に及ぼす影響
【 要約 】 牛で行われている夜間給餌は、めん羊では夜間の分娩を増加させること、一日 中明るい全明条件下では、明暗のリズムがある照明方式よりも、夜間の分娩率が減少す る傾向が認められた。全明条件下での給餌条件は朝1回または朝夕2回給餌により、60% 強の昼間分娩率が期待できる。
北海道立滝川畜産試験場・研究部・衛生科,めん羊科 連絡先 0125-28-2211
部会名 畜産・草地(畜産) 専門 飼育管理 対象 家畜類 分類 指導

【 背景・ねらい 】
 近年、牛や豚では夕方から夜間に飼料を給与する事により、分娩が昼間に集中することや、ラットやさるでは光周期によって分娩のタイミングが影響を受けるということが報告されている。そこで本試験では、給餌方式および夜間の点灯方式がめん羊の分娩時刻にどのような影響を及ぼすか、また、これらの処理が生体リズムに与える影響についても検討を行った。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 滝川畜産試験場において1989〜1995年に分娩したサフォーク種雌羊延べ1,717頭の昼間分娩率(6〜18時、以下同様)は54.6%であった。これらの雌羊は、分娩シーズンに朝夕2回給餌および一晩中点灯する全明方式によって管理されていた。
  2. 給餌時刻が雌羊の分娩時刻に影響を全明条件下で検討した。昼間分娩率は、夜給餌区29.2%(14/48)、朝夕給餌区64.8%(35/54)と、夜給餌区は朝夕給餌区に対して、有意に昼間分娩率が低下した(P<0.01)(図1)。
  3. 給餌回数が雌羊の分娩時刻に及ぼす影響を全明条件下で検討した。昼間分娩率は、朝1回給餌では、58.3%(14/24)、朝夕2回給餌では60.0%(12/20)と差はなかった(表1)。
  4. 夜間照明方式の違いが、雌羊の分娩時刻に及ぼす影響を朝1回給餌条件下で検討した昼間分娩率は、全明区で57.1%(12/21)、長日区で45.8%(11/24)、自然日長区で45.8%(11/24)と、暗期のある照明方式で低下する傾向がみられた(表2)。
  5. 分娩予定2週前の妊娠羊各6頭をを、朝給餌区、夜給餌区に分けて、血中コルチゾール体温の日内変化と分娩時刻との関係を調べた。給餌時刻により、体温およびコルチゾール濃度は11日後に朝型、夜型に移行するものがあったが、変化のない、あるいは、日内変動パターンを示さない個体も見られた。昼間分娩率は、夜給餌区33%,朝給餌区67%となった(図2)。
  6. 4頭の妊娠羊を用いて、子宮収縮および血漿コルチゾールの日内変動の有無と分娩時刻との関係について調べた。その結果、分娩数日前から子宮収縮頻度およびコルチゾール濃度の日内変動が認められ、子宮収縮頻度の高い時間帯に陣痛が始まるように見受けられた。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 夜間照明には蛍光灯を用い、めん羊の目の高さで80lux以上(一番暗いところでも40lux以上)の照度を確保する。
平成8年度北海道農業試験会議成績会議における課題名および区分
課題名:給餌方式および夜間点灯がめん羊の分娩時刻に及ぼす影響(指導参考)

【具体的データ】

表1 飼料の給与回数が
分娩時間帯に及ぼす影響
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昼間分娩率
処理区    頭数    (6〜18時)
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朝1回給餌   24     58.3%
朝夕2回給餌  20     60.0%
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表2 夜間点灯方式が
分娩時間帯に及ぼす影響
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昼間分娩率
処理区    頭数    (6〜18時)
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全明処理    21     57.1%
長日処理*   24     45.8%
自然日長    24     45.8%
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*4時から24時まで点灯

【 その他 】

研究課題名:分娩時刻調節による省力的子羊生産技術
予算区分 :道  費
研究期間 :平成8年度(平成5〜7年)
研究担当者:草刈直仁・仙名和浩・米道裕彌・斉藤利朗・出岡謙太郎・戸苅哲郎、山内和律・工藤卓二・裏 悦次
発表論文 :

        「平成9年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.311