「北海地鶏」の飼養法(栄養水準・飼育形態・飼育密度)が発育と肉質に及ぼす影響
【 要約 】 北海地鶏は飼料の粗タンパク質(CP)水準の高い方が発育が早く、代謝エネルギー(ME)水準の高い方が腹腔内脂肪割合および腿肉の脂肪含量が高かった。飼育形態では、ケージ飼は平飼および放飼に比べて発育が早く、腹腔内脂肪割合および腿肉の脂肪含量が高かった。飼育密度による発育および肉質への影響は認められなかった。
畜産資源開発科
北海道立滝川畜産試験場・研究部・家きん科
連絡先 0125-28-2211
部会名 畜産・草地(畜産) 専門 飼育管理 対象 家畜類 分類 指導

【 背景・ねらい 】
 近年、鶏肉に対するニーズが多様化し、これに対応して高品質肉鶏「北海地鶏」を作出した。しかし、北海地鶏の飼育はブロイラーとは異なる点が多いので、飼育技術の主要な点について明らかにしておく必要がある。
 そこで本試験では、(1)給与飼料の栄養水準(タンパク質、代謝エネルギー)(2)飼育形態(ケージ飼:5羽/ケージ、平飼:22羽/3.3m2、放飼:2羽/3.3m2)(3)平飼における飼育密度、これらの違いが北海地鶏の生産性および肉質に及ぼす影響について検討した。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 給与飼料の栄養水準の検討(表1)
    ・発育は、CP水準が高いほど優れたが、ME水準による影響は認められなかった。
    ・CP15%は、CP17および19%に比べて腿肉及び胸肉の脂肪含量が高かった。
    ・ME3250kcal/kgは、ME2800および3000kcal/kgに比べて腹腔内脂肪割合および腿肉の脂肪含量が高かった。
    ・飼料要求率は、CP水準が同じ場合はME水準の高い方が、ME水準が同じ場合はCP水準の高い方が低かった。
  2. 飼育形態の検討(表2)
    ・ケージ飼は、平飼および放飼に比べて発育が早く、胸肉、ササミおよび筋胃割合が低く、腹腔内脂肪割合および腿肉の脂肪含量が高かった。
    ・飼料要求率は、ケージ飼が最も低かった。
  3. 平飼における飼育密度の検討(表3)
    ・飼育密度が20〜40羽/3.3m2の範囲では発育、飼料要求率、解体成績および肉質に及ぼす影響は認められなかった。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 多様なニーズに対応するため、「誰がどのように」消費するかを把握して、生産者は飼育方法 を決める必要がある。なお、飼育方法選定時の判断基準は表4に示した。
  2. 放飼の場合は、有害鳥獣対策が必要である。ケージの給餌、給水部の網目間隔は60mm程度必要である。
平成8年度北海道農業試験会議成績会議における課題名および区分
課題名;北海地鶏の飼養法が発育と肉質に及ぼす影響(指導参考)

【具体的データ】

表1.給与飼料の栄養水準と体重および肉質※
要因水準16週齢
体重(g)
屠体重に対する割合(%)脂肪含量(%)
正肉腹腔内脂肪腿肉胸肉
CP(%)152,006a42.943.215.53a1.46a
172,176b43.423.534.45b1.09b
192,230c43.173.094.11b0.98b
ME(kcal/kg)28002,16143.722.81a4.17a1.15
30002,13843.183.11a4.52a1.11
32502,11342.643.90b5.41b1.27
縦列異文字間に有意差あり(P<0.05) ※LSM

表2.飼育形態と体重および肉質※
要因水準14週齢
体重(g)
屠体重に対する割合(%)脂肪含量(%)
腿肉胸肉ササミ腹腔内脂肪筋胃腿肉
形態ケージ1,959a23.5115.46a3.12a3.14a1.66a5.57a
平飼1,839b23.5416.80b3.57b1.86b1.85b4.38b
放飼1,830b23.2416.85b3.61b1.35b1.98b4.08b
縦列異文字間に有意差あり(P<0.05) ※LSM

表3.平飼における飼育密度と体重および肉質※
要因水準14週齢
体重(g)
屠体重に対する割合(%)脂肪含量(%)
正肉腹腔内脂肪腿肉
密度(羽/3.3m2)201,84143.562.024.34
301,83443.472.214.41
401,82043.242.004.67
縦列異文字間に有意差あり(P<0.05) ※LSM

表4.主要形質の傾向
要因水準屠体重に対する割合(%)脂肪含量(%)
正肉腹腔内脂肪筋胃腿肉胸肉発育
CP(%) 15   
 17   
 19   
CP(%)ME(kcal/kg)2800    
3000    
3250    
形態ケージ 
平飼 
放飼 

【 その他 】

研究課題名;大型高品質肉鶏の作出と「北海地鶏」の飼養法の確立
予算区分;道費
研究期間;平成8年度(平成5〜8年)
研究担当者;森嵜七徳・宝寄山裕直・大原睦生・阿部英則・田中正俊・杉本亘之・裏 悦次
発表論文など:

       「平成9年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.314