アルファルファの根釧地域における適応要因の解明とそばかす病抵抗性選抜手法の検討
【 要約 】 根釧地域のアルファルファは夏季間のそばかす病の多発によって当地域に必要な耐冬性が低下する。適応性向上のためには高度のそばかす病抵抗性を有することが第一の条件である。そばかす病抵抗性は遺伝的変異が大きく*根釧地域の現地選抜によって高い選抜効果が得られる。
北海道立根釧農業試験場・研究部・作物科 連絡先 01537-2-2004
部会名 畜産・草地(畜産) 専門 育種 対象 牧草類 分類 研究

【 背景・ねらい 】
 アルファルファを寒冷寡照・土壌凍結地帯に位置する根釧地域に導入・定着させるための適応要因を解析し*そばかす病について抵抗性育種素材選抜のための現地選抜の可能性を検討する。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 冷涼湿潤な夏期間にはそばかす病抵抗性*冬期間では耐冬性が重要で*これらの改良が適応性を向上させる。
  2. そばかす病の多発は耐冬性(特に*耐凍性*耐凍上性)の発現を抑制する。土壌凍結地帯の根釧地域で適応するためには*そばかす病に対して高度の抵抗性を持つことが前提となる。
  3. そばかす病害が耐冬性の発現を抑制するため*それが多発する品種・系統群では*生育型と耐冬性の関係は不明確となる。すなわち*一般に土壌凍結地帯の耐冬性はⅢ型<Ⅳ型<Ⅴ型であるが*根釧地域の耐冬性はⅣ型*Ⅴ型品種よりはむしろ秋季休眠性が中位でそばかす病抵抗性に勝るⅢ型品種が良好である。
  4. 耐冬性の発現を抑制しない程度にそばかす病害が改良された品種・系統群(少なくとも「キタワカバ」以上の抵抗性を有する)では開張型で*秋季休眠性が強い系統ほど耐冬性*永続性が優れ*根釧地域においても一般的に認められる関係が成立する(図1)。
  5. そばかす病抵抗性の品種および個体は秋季休眠性が中程度で直立型のものが多いが*比較的強い秋季休眠性を示す例外も存在し*耐冬性とそばかす病抵抗性が両立する可能性がある。
  6. そばかす病抵抗性の狭義の遺伝率は極めて高く*2サイクル以上の表現型による選抜により抵抗性を高度に高めることが可能である(図2)。
  7. 根釧地域では自然発病条件下でそばかす病抵抗性の品種間変異*個体間変異の検出が容易である。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 得られた知見は*根釧地域向けアルファルファ品種育成に利用できる。
  2. 系統および導入品種等の評価*選定の際の基礎資料として利用できる。
  3. 選抜した母材は今後の品種育成に活用できる。
平成8年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分
課題名:アルファルファの根釧地域における適応要因の解明とそばかす病抵抗性母材の選抜(研究参考)

【 その他 】

研究課題名:「寒冷寡照土壌凍結地帯に適する採草用マメ科草品種系統の選抜試験」および「土壌凍結地帯向け牧草の現地選抜試験」
予算区分:道費
研究期間:平成8年度(昭和62〜平成8年)
研究担当者:竹田芳彦・中島和彦・澤田嘉昭・堤光昭・越智弘明・千葉一美・玉掛秀人・鳥越昌隆・藤井弘毅
発表論文等:根釧地域に適応するアルファルファ(Medicago sativa)品種の特性

  1. 造成年における耐冬性とその関連形質の品種間変異 日草誌投稿中
  2. 2年目以降における耐冬性とその関連形質の品種間変異 日草誌投稿中
  3. 自然発病によるそばかす病罹病程度の品種間変異 日草誌投稿中
        「平成9年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.383