ジャガイモそうか病菌の遺伝子診断
【 要約 】 ジャガイモそうか病菌 Streptomyces scabies(sub sp.achromogenesを含む)、S. turgidiscabies、直〜波状胞子鎖緑色色素産生菌判別用プライマーを設計し、PCRによる菌種判別法を確立した。人工汚染土の希釈平板を作成し、放線菌数を計数した。
北海道立中央農業試験場・生物工学部・遺伝子工学科 連絡先 01238-9-2001
部会名 基盤研究 生産環境 専門 作物病害 対象 いも類 分類 研究

【 背景・ねらい 】
 ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chane reaction : PCR)を利用した遺伝子診断法が種々の分野で活用されている。ジャガイモそうか病の病原放線菌の遺伝子診断のためのPCRプライマーを設計して、PCRによる菌種判別や土壌検診を行う。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 市販のプライマーを用いてそうか病の病原放線菌を対象としたRAPD分析を行うと、種に限定的な多 型断片を観察することができた。その断片をプローブとして用いるサザンハイブリダイゼーションは、病原 放線菌の各菌種に特異的なRFLPを示した(図1)。
  2. S. scabies(sub sp. achromogenesを含む)(図2)、S. turgidiscabies、および直〜波状胞子鎖緑色 色素産生菌を判別する3種のプライマーを設計し、PCRによる菌種判別法を確立した。
  3. 希釈平板培地を検討した。デンプン培地にペニシリンG 0.25mg/l、ポリミキシンB 0.1mg/l、ナリジキシ ン酸 1mg/l、シクロヘキシミド 50mg/、ナイスタチン50mg/を添加したものは、病原放線菌のコロニー数、 生育量に影響がなかった。培地固化材に電気泳動用アガロースを使用すると、拾い上げたコロニーを無 処理でPCRの鋳型として使用できた。
  4. 人工汚染土の希釈平板を作成し、放線菌数を計数した。さらにS. scabies sub sp.achromogenes 接種 区およびS. turgidiscabies接種区のコロニー94個をPCR反応するとどちらからも1つだけ接種菌が検出された(図3)。無接種区、接種区とも全放線菌数は1x108 cfu/g乾土であったことから、病原菌密度は 1x106cfu/g乾土前後と推定された。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. RAPDによる多型検出とその断片を標識してプローブとして用いるRFLP検出は系統、個体間の多型 検出に有効で、PCR装置と電気泳動装置だけで実施できる。
  2. 菌種判別用のプライマー3種は配布可能である。
  3. 希釈平板上のコロニーをPCRにより判定することでそうか病菌密度の推定が可能である。しかし判定 に1検体当たり半日以上を要するなど、簡便化が必要である。
平成8年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分
課題名:ジャガイモそうか病菌の遺伝子診断(馬鈴しょそうか病の防除技術の開発)(研究参考)

【 その他 】

研究課題名:ジャガイモそうか病菌の遺伝子診断(馬鈴しょそうか病の防除技術の開発)
予算区分:道費
研究期間:平成8年度(平成6〜8年)
研究担当者:木口忠彦・紙谷元一
発表論文等:なし

        「平成9年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.388