病害虫グループ
1.グループの概要
道央地域の病害虫に対する問題解決のため、新発生病害虫や難防除病害虫など、まだ防除方法が確立されていない病害虫を対象に、発生生態(生活や生存の様式、発生の仕方や被害の特徴など)の解明や防除対策の確立の試験を実施しています。
また、クリーン農業を推進するため、恒常的に発生したり、あるいは農薬が多用されている農作物病害虫に対して、IPMの視点から防除法を開発・改良・確立する試験研究を行っています。
さらに道央地域の有機農業を推進するための病害虫に関連する試験を実施しています。
・IPM(integrated pest management)とは、天敵生物や耕種的防除、化学農薬など様々な防除対策を効果的に組み合わせて、病害虫を総合的に管理する防除の考え方です。
2.試験課題
1)ネオニコチノイド系殺虫剤に依存しない水稲栽培のための防除体系の確立
水稲の主要害虫であるアカヒゲホソミドリカスミカメとヒメトビウンカを対象として、道内の主要水稲栽培地域でネオニコチノイド系殺虫剤を使用せずに水稲栽培が可能となる防除体系を確立する。
2)気象変動に対応した高品質で安定生産可能な道産小麦の開発促進(令和7-9年)
変動の大きい気象条件下でも道産小麦の安定生産を可能にするため、雨害耐性(穂発芽耐性、赤かび病抵抗性)、茎葉病害(赤さび病、うどんこ病)抵抗性に優れる品種の開発を促進する。
3)化学合成農薬の種子処理に依存しない秋まき小麦の紅色雪腐病防除技術の開発(令和7-9年))
秋まき小麦栽培において、採種圃場で生産される種子のニバーレ菌の保菌率を低減する技術を確立するとともに、種子の温湯消毒による防除技術を検討することにより、化学合成農薬の種子消毒に依存しない紅色雪腐病対策技術を開発する。
4)多発及び耐性菌に対応したテンサイ褐斑病の省力的防除技術の開発
適切な散布終了時期を検討、早期散布による防除効果を検討するとともに、新規薬剤の探索を含めた、マンゼブ剤以外の薬剤の防除効果を確認し、これらに基づいて、テンサイ褐斑病の多発条件下において、糖量への影響を最小限にした省力的な防除方法を提案する。
5)低コストかつ効率的な土壌消毒を前提とした施設トマト栽培技術の開発(令和6-8年)
高い土壌消毒効果を発揮する側面根域制限栽培を開発する。その環境において従来の栽培技術、施肥管理が収量性や品質に影響するか検証、慣行栽培に比較し劣る点が認められた場合は改善策を示す。
6)セルリーのファイトプラズマ病による被害を抑制する総合的対策技術の開発(令和5-7年)
セルリーのファイトプラズマ病の感染経路を解明し防除技術を開発するとともに、ファイトプラズマ病の症状に類似する障害の要因整理および対策を提示することで、YES!clean登録基準に適合する防除と栽培管理を組み合わせた総合的な対策技術を開発する。
7)主要害虫の光防除技術実用化に向けた専用資材の検討(令和6-8年)
先行課題において試作に着手した大豆のマメシンクイガ防除用LED照明装置の効果を検証し、改良を加えて生産者圃場で利用可能な製品の開発を目指す。
8)農業資材試験(昭和45年~)
新たに開発された農薬の登録について、各種病害虫に対する防除効果と薬害の有無を検討し、農業資材の実用化に資する。
9)その他の課題
(1) 春まき小麦の品種選定試験(令和3-7年)
(2) 大豆のカメムシ被害実態調査(令和7年)
(3) 病害虫発生予察調査(昭和16年~)
3.最近の成果
水稲
1)ばか苗病菌の水稲育苗行程における汚染防止のための注意点と対策(令和2年)
2)水稲の直播栽培におけるイネドロオイムシを主体とした初期害虫の効率的防除法(平成30年)
3)水稲の紋枯病と赤色菌核病の発生実態と防除対策(平成30年)
畑作
1)青色 LED を利用した大豆のマメシンクイガ防除技術(令和5年)
2)多発傾向に対応した秋まき小麦の赤さび病防除対策(令和5年)
3)スイートコーンにおける黄色LEDを利用した鱗翅目害虫防除技術(令和2年)
4)平成27年~28年のアズキ茎疫病菌レースの分布(平成30年)
園芸
1)ブロッコリー根こぶ病の圃場診断・対策支援マニュアルを活用した防除対策(令和3年)
4)ブロッコリー栽培における化学合成農薬・化学肥料削減技術の高度化(平成29年)
5)施設栽培ほうれんそうのコナダニ被害を抑制する土壌管理法の確立(平成28年)
果樹
1)醸造用ぶどうの有機栽培における病害虫の発生実態および防除の改善策(令和2年)
職員
研究主幹 小野寺 鶴将
主任主査(防除技術) 新村 昭憲
研究主査 橋本 直樹
研究主任 齊藤 美樹
研究職員 中島 賢
研究職員 佐藤 翠音