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酪農試験場

これまでの主な研究成果(平成14~19年度)


○ 乳牛における分娩前の飼養管理方法の改善による介助分娩の低減(平成19年度・指導参考事項)
 難産および介助分娩は繁殖成績を低下させることが知られています。一方、推奨される分娩前の飼養管理方法が分娩状況に及ぼす効果は実証さ れていないため、介助分娩あるいは不要な介助で生じた難産が発生しています。本試験では、乾乳後期用飼料への移行時期および分娩管理方法が介助分娩の低減 に及ぼす効果を明らかにしました。

○ 63℃30分の熱処理が初回初乳の抗体濃度と子牛への移行割合に与える影響(平成19年度・指導参考事項)
 63℃30分条件で生乳の殺菌を行う、初乳用低温殺菌装置の利用法と殺菌初乳による子牛への抗体移行効果を明らかにしました。また、その利用上の留意点について示しました。

○ 泌乳牛用TMRにおけるチモシー2番草サイレージの栄養評価(平成19年度・指導参考事項)  (パンフレット)
 2番草サイレージは、1番草刈り取り後の施肥管理、2番草サ イレージの刈り取り時期や調製条件が多岐にわたっており、「嗜好性が悪い」、「栄養価が低い」あるいは「腹持ちが悪い(ルーメン内の滞留時間が短い)」などと評価されています。この低い評価は経験に基づくことが多く、また2番草それ自体の要因と草地管理や調製技術上の要因が混在した評価であり、整理されて い ないのが現状です。本成果では再生期間60日のチモシー2番草サイレージを用いて栄養特性および乳生産性について示しました。

○ 乳牛への直接給与制菌(DFM)剤給与による粗飼料の利用効率向上効果(平成19年度・指導参考事項)
 直接給与生菌(DFM)剤は有用微生物の働きにより、飼料利用効率の向上などが期待されますが、微生物の組み合わせや割合により、その効果は大きく異なると考えられます。本課題で用いたDFM剤においては、一部、ルーメン内溶液性状および成分消化率に給与の効果が認められました。本剤給与による効果は、飼料構成や乳牛の生理状態に影響を受けると考えられました。

○ 生乳の風味特性と機器による脂肪分解臭の迅速評価法(平成18年度・指導参考事項)
 生乳の風味に影響を及ぼす脂肪酸量は赤外線多成分分析装置で迅速に計測できること、また、生産現場に近い農協等で実施できる官能検査手法と、検査員訓練のための見本試料の作成方法を示しました。

○ 放牧条件が牛乳の栄養・機能性成分に与える影響(平成18年度・指導参考事項)
 放牧飼養により生乳中のCLA(共役リノール酸)が増加することが注目されています。しかし、放牧草の品質や放牧時間などとの関連性については明らかになっていません。そこで、CLAの原料となる放牧草に含まれる多価不飽和脂肪酸の変動要因、放牧時間、放牧草摂取量とCLAの関係について検討しました。その結果、放牧飼養による生乳を特徴付ける放牧条件について示すとともに、その特徴はチーズへ加工しても維持されることを示しました。

○ 
乾乳牛の糞尿量・窒素排泄量の原単位の策定と乳牛のメタン発生量の低減(平成18年度・研究参考事項)
 乾乳牛の糞尿量、糞尿窒素排泄量の原単位の策定と、乳牛のメタン発生量について検討しました。その結果、サイレージを給与した乾乳牛の窒素利用効率は悪いこと、飼料摂取量が少ないにもかかわらず泌乳牛と同等の糞尿窒素量であることを示しました。また、TMRを給与している泌乳牛に対し、消化性の良い牧草サイレージを利用することでメタン発生量を低減できることを示しました。

○ 草地酪農における道産飼料100%の乳牛飼養法(平成17年度・普及推進事項)
 地域資源を活用した安全・安心な畜産物生産という観点から、輸入飼料に依存せず、道内で自給される粗飼料と農業副産物を用いた泌乳牛飼養法について検討し ました。その結果、牧草サイレージに農業副産物を第一胃内発酵に悪影響のない割合で混合したTMRにより7,300㎏、また、放牧草に副産物を併給することで8,000㎏の乳生産が得られることを明らかにし、給与メニューについて示しました。

○ 原料乳がカード特性に及ぼす影響および小規模工房チーズの理化学性による評価手法の検討(平成17年度・指導参考事項)
 小規模工房におけるチーズ品質の安定と向上のため、カード物性評価法を確立するとともに、カード凝固硬に及ぼす殺菌工程における昇温条件の影響を示しました。また、電気伝導度を利用した乳酸発酵のモニタリング手法を示しました。さらに、香り識別装置と物性測定装置を用いた理化学的指標による小規模工房のチーズ製品管理の可能性についても示しました。

○ 乳牛における活動量の変化検出による発情発見システム(平成16年度・普及奨励事項)
 乳牛のフリーストール飼養においては、万歩計による発情発見システムがあります。既存システムの多くは、活動量のデータ取得が搾乳時に限られる事から、発情の開始と終了を特定することはできません。その改善策として活動量データの頻回収集法を検討するとともに、活動量と発情行動、排卵との時間的な関係を明らかにし、発情開始時期と授精適期を特定できるシステムを開発しました。

○ 乳牛の預託集団哺育における飼養管理の実態と早期離乳法(平成16年度・指導参考事項)
 乳牛の預託集団哺育が普及しつつあり、預託集団保育では自動哺乳装置を用いた哺育が一般的です。平成13年度に自動哺乳装置を用いた生後60日間の 哺育プログラムが示されましたが(道立畜試)、預託集団哺育施設の利用効率を考慮した場合、より早い期間で離乳可能な哺育プログラムが求めれています。本 成果では、自動哺乳装置を用いて、離乳日齢および哺乳量の違いが子牛の人工乳摂取量および発育に及ぼす影響について検討し、生後42日間で離乳可能な早期 離乳法を示しました。

○ 乳牛における繁殖機能の発達と初産分娩月齢の早期化(平成16年度・指導参考事項)
 乳用後継牛においては、経営内での省力化、乳牛更新の効率化のため初産分娩月齢の短縮が求められています。そこで、育成牛の体格発育と繁殖機能発達との関係、また哺育育成預託システムにおける育成牛の繁殖成績、ならびに初産次の繁殖および泌乳成績実態等から初産分娩月齢の早期化について検討を行いました。その結果、初産分娩月齢を早めるには8ケ月齢までの発育が重要であること、良好に発育した育成牛は8ケ月齢で春機発動、11ケ月齢までに性成熟に至り、、12ケ月齢には授精可能となることを示した。また、受胎後の飼養管理が適切であれば、21ケ月齢で分娩しても初産次成績に大きな問題がないことも示しました。

○ 飼料設計のための新飼料成分表(平成15年度・普及推進事項)
 乳牛の消化生理を考慮した新しい飼料設計システムを活用するため、道内で利用されている流通単味濃厚飼料および粗飼料について、新たな飼料成分表(一般成 分、リグニン、有機酸、糖、溶解性繊維(S.FIB)、ADF中CP(ADIP)、NDF中CP(NDIP)、非タンパク質態窒素(NPN)、in situCP分画、第一胃内タンパク質分解速度、第一胃内NDF分解速度)を作成しました。

○ 給与飼料改善による生乳中共役リノール酸(CLA)含量向上技術(平成15年度・指導参考事項)
 反芻動物の乳肉中に含まれる共役リノール酸(CLA)には抗腫瘍作用、免疫賦活作用などの生理活性があることが知られています。そこで、生乳中のCLA含量の動態と変動要因を検討しました。その結果、放牧飼養、あるいは全粒大豆や米ヌカなどの高脂肪含量の飼料を給与することにより、生乳中のCLA含量は高くなることを示しました。

○ ミネラル・ビタミン混合飼料による乳牛の繁殖改善効果(平成15年度・指導参考事項)
 微量ミネラルおよび脂溶性ビタミンが不足している状況においては、周産期におけるミネラル・ビタミン混合飼料の給与により、乳牛の分娩後における肝機能の低下を防ぎ、卵巣機能および子宮の修復を早めることで、低受胎率を改善する可能性があることを示しました。

○ 草地酪農における飼料自給率70%の放牧技術(平成14年度・普及奨励事項)
 放牧草の栄養価を評価するとともに、併給濃厚飼料の給与量を制限する際の飼料構成および給与水準とその生乳生産性を明らかにし、TDN自給率70%のため の飼料給与メニューを作成しました。また、放牧時の栄養モニタリングとして乳中尿素窒素(MUN)の適正値を明らかにしました。

○ 乳牛の蹄疾患早期発見と蹄の健康管理技術(平成14年度・普及推進事項)
 乳牛の運動器病の発生割合は高く、除籍や生産性の低下の一因となります。運動器病の中でも蹄疾患の割合が大きくなっています。そこで、蹄疾患の早期発見を可能とするモニタリング手法と、蹄の健康維持を可能とする飼養管理について検討を行いました。

○ バルク乳温度監視装置の利用方法(平成14年度・普及推進事項)
 酪農場におけるバルク乳温の管理目標について検討しました。また、開発されたバルク乳温度監視装置度の温度追従特性を調査するとともに、生乳冷却システムと乳温の関係、さらには冷却機性能・洗浄水温とその異常事態の検知方法について検討しました。

牧草サイレージの品質と乳牛の採食性からみた春のスラリー散布時期(平成14年度・普及推進事項)
 根釧地域におけるスラリーの肥料効果からみた施用適期は5月中旬ですが、酪農現場では牧草サイレ-ジの採食性が低下するとして春散布を避ける事例 が多くみられます。その原因として、原料草へのスラリーの付着や牧草サイレ-ジ品質の低下が挙げられています。本成果では、スラリーの春散布がサイレージ 原料草へのスラリー付着量、サイレージの品質および乳牛の採食性に及ぼす影響を検討し、5月中旬までにスラリーの散布時期を実施すれば、乳牛の採食性に問 題ないことを明らかにしました。

○ 牛群検定成績における個体の乳中尿素窒素濃度の特性(平成14年度・指導参考事項)
 全道の乳検成績をもとに、乳中尿素窒素濃度の平均値と変動要因を解析しました。その結果、乳中尿素窒素濃度は、牛群の栄養診断として用いる場合に参考となることを示しました。