水産研究本部

試験研究は今 No.49「 道北海域におけるマガレイの系群について」(1990年11月9日)

試験研究は今 No.49「 道北海域におけるマガレイの系群について」(1990年11月9日)

Q&A? 道北海域におけるマガレイの系群について教えて下さい。

  マガレイは、北海道全域に分布していますが、特に道北日本海やオホーツク海に多く、主に100メートル以浅の海域に生息しています。

  さて、道北海域(石狩湾~知床岬)のマガレイの系群については、現在のところまだ一致した見解はありませんが、オホーツク海系群、日本海系群、網走湾系群(仮称)の3つに分かれていると考えられます。
    • 道北海域におけるマガレイの系群と主要産卵場

オホーツク海系群

  オホーツク海系群は、苫前から宗谷海峡までの日本海側沿岸域を主要産卵場とし、日本海で生まれ、オホーツク海で成長します。道北日本海及びオホーツク海で漁獲されるマガレイの多くは、この系群に属しています。産卵は4~6月上旬に、水深40~60メートルの沿岸域で行なわれます。マガレイの卵は一般に海水より軽く、1個1個がばらばらになって海面に浮遊(分離浮性卵)し、水温7~10度の環境では、受精後6日でふ化します。受精卵やふ化した仔魚(この頃は普通の魚のように左右対称に目がある)のほとんどは、海流にのってオホーツク海に運ばれ、7月下旬~8月上旬には雄武を中心とした海域で稚魚(この頃には二つの目が右側に寄り、成魚と同じような形態となる)として着底し、底生生活を始めます。その後、オホーツク海沿岸域で幼魚、未成魚期を過ごし、雄では2~3才、雌では3~4才になると、そのほとんどが産卵のため北上を開始し、翌年の春には日本海に産卵群として現れます。過去の標識放流調査では、回遊群のほとんどは苫前、羽幌以北の沖合に分布し、一部のものは留萌や増毛の沖合まで南下し、日本海系群と混じり合い、生活をともにするようになると考えられています。

  しかし、最近ではオホーツク海系群の資源が衰退していることから、果たして成長の良いオホーツク海系群がこの海域まで南下するのかどうか疑問視されています。

日本海系群

  日本海系群は日本海でそのまま成長する系群で、オホーツク海系群に比べ極めて成長が悪いことが知られています。日本海系群は主に石狩湾や増毛~小平海域で産卵していると考えられますが、オホーツク海系群と産卵場が連続するため、独立した系群であるのか、それともオホーツク海系群に含まれるものか、まだはっきりとしていません。また成長の悪い日本海育ちの群は苫前以北の海域にも分布することが知られていますが、この群がどの採卵場に由来するのかも不明です。

網走湾系群(仮称)

  網走湾や知床半島の沿岸には、以前から成熟卵をもった産卵群と思われる高齢魚の群れが存在することが知られていましたが、この群が独立した系群であるのかどうか、はっきりしていませんでした。しかし、近年、魚類の鰓(えら)に寄生する橈脚類(たんきゃくるい)の1種がこの海域のマガレイから発見されました。その後の調査から、この動物は網走湾内のマガレイに寄生する率が高く、反面、能取岬以北で採取されたマガレイにはほとんど寄生していないことが分かってきました。

  このことから、網走湾のマガレイは能取岬以北の群(オホーツク海系群)とは混じり合わない独立した系群とみなしてよいと考えられます。

  このように道北日本海のマガレイの系群についてはまだまだ未知の部分が多く残されています。一般に魚類は系群ごとに産卵場や回遊経路などが異なるため、資源量も系群を単位に変動しています。そのため、適正な資源管理を行うためには、これらの系群を区別し、系群ごとの産卵場、産卵期、回遊経路などを解明することが大変重要になるのです。
(稚内水試)