水産研究本部

試験研究は今 No.60「石狩におけるシラウオの生態について」(1991年4月5日)

Q&A? 石狩におけるシラウオの生態について教えてください?

  シラウオは、北海道では網走湖、サロマ湖、風蓮湖、厚岸湾、噴火湾の遊楽部川、津軽海峡の上磯(大野川・戸切地川河口付近)、天塩川、石狩川、小樽及び余市川などに分布し、産卵期になると湖や河川に遡上して、産卵する汽水性の一年魚です。

  このうち、石狩では、4~5月に前浜で底刺網によって漁獲され、6月になると石狩川の下流域でワカサギの地曳網で混獲されており、昭和61年以降の漁獲量はおよそ10~70トンと、その年によって漁獲量が変動していますが、その生態はあまり明らかにされていません。

  このため、試験研究プラザでの要望もあって、平成元年度から石狩前浜及び石狩川水系においてシラウオの生態調査を実施しましたので、その結果について概要をお知らせします。

  まず、魚群行動と熟度の関係について見ますと、4~5月上旬の魚は未熟で、沿岸域の広い範囲に分布していますが、熟度の進行にともない、その分布が狭くなるため密度が高くなります。この状態は河口に近いほど顕著です。

  5月中旬になると、河口付近に完熟した魚が密集し、群れの一部は産卵のため河川に遡上するので、魚群の密度は低くなりますが、それより離れた場所や河口付近の半熟卵が混じる魚群は密度も比較的高いようです。

  つぎに、この海域における産卵期を調べるため、石狩川の下流域で混獲されるシラウオの成熟度を観察しました。

  その結果、次のぺ一ジの図のとおり、6月上旬には完熟卵を持つ個体と産卵後のものがわずかに見られますが、時間の経過に従い、完熟卵を持つ個体が多くなり、下旬には産卵後のものが比較的多く見られるようになります。従って、この海域におけるシラウオの産卵期は6月上旬~7月にかけて行われることが明らかになりました。

  これまで言われてきた産卵期は地方によって異なり、本州中部では3月中旬~4月上旬、東北地方は4月下旬~5月中旬で、北海道では4~5月にかけて行われるところから、石狩川におけるシラウオの産卵期はこれまでよりも1か月以上遅いことがわかりました。

  このほか、産卵場を調べるため、6~7月に石狩前浜及び石狩川、真勲別川、茨戸川などの産卵に適していると思われる場所で採泥と採草を行い、シラウオの付着卵があるかどうかを観察調査しました。

  その結果、石狩川水系の両岸の軟泥質に繁茂する水草類から種不明の魚卵を数多く採集しましたが、いずれの調査点でもシラウオの卵を発見することは出来ませんでした。

  以上のことから、石狩川で孵化したシラウオの稚仔は、9月頃、体長30ミリメートル前後になって降海し、冬季間沿岸域で過ごした後、翌年の5月には体長75ミリメートルに成長して河口付近に密集し、体長80ミリメートル以上の成体になって産卵することがわかります。

  このため、シラウオの密集時期と場所が特定されるので、獲られやすさがあり、また、一年魚であることから、産卵親魚を現状以上に獲り過ぎると、次代の資源に及ぼす影響は大きいと考えられます。

  水試では3年度も引き続いてシラウオの産卵場確認調査を行うことにしております。(中央水試)

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