水産研究本部

試験研究は今 No.64「ホタテガイ生殖巣(卵巣、精巣)と養殖用間引きホタテガイの利用について」(1991年5月24日)

Q&A? ホタテガイの生殖巣(卵巣、精巣)と養殖用間引きホタテガイの利用について

  北海道におけるホタテガイの生産量は平成2年度で約33万トン、金額で600億円と推定されています。ホタテガイの用途別処理配分は、生鮮、ボイル、冷凍がそれぞれ約26パーセントで全体の約80%を占め、乾貝柱、缶詰が残り20パーセントとなっています。

  この中で冷凍貝柱、乾貝柱などの貝柱製品の占める割合は非常に高く、それにともない貝柱以外の他の部位、卵巣・精巣(生殖巣)、ミミ(外套膜)、ウロ(中腸腺)などが大量に排出されます。

  ミミは調味乾製品として利用されていますが、卵巣・精巣やウロはほとんどが投棄されている状況にあります。
ホタテ部位説明
 また、ホタテガイ養殖事業が盛んになるにしたがい、発生する間引き貝も相当数あり、これについての新しい利用法も求められています。

試験場では、ホタテガイの卵巣・精巣と間引き貝を原料としていくつかの簡単な試作品を作りましたので、それを紹介します。

1:ホタテガイの卵巣・精巣を利用したソーセージ様製品

[製造工程]
原料→雌雄分別→煮熟(5分)→副材料混合→らいかい(10分)→腸詰→くん乾→煮熟(80度、40分)→冷却→製品。
副材料は卵巣・精巣に対して、すり身20パーセント、塩3パーセント、澱粉4パーセント、バター10パーセントを用い、あらかじめ良く、らいかいしておきます。食感は、雄(白)を原料とすると硬く、雌(赤)では軟らかいという特徴がありました。硬さを調節することは、雌雄混合や副材料の配合割合を変えることにより簡単にできます。くん乾は20度で6時間行うのが、色調、香りの面で優れていました。また、製品の保存性をよくするには真空包装して、さらに80度で40分の加熱殺菌を行うのが良いでしょう。

2:間引き貝の利用について
1. くん油漬け
[製造工程]
ホタテガイ→一番煮→殻はずし→軟体部→ウロ除去→二番煮→くん乾→オイル漬(一晩) →油切り→製品。
一番煮は3パーセント塩水で5分、二番煮は8パーセント塩水で10分煮熟しました。くん乾は80度、で2時間行いました。オイル漬は3倍量のサラダオイルを使用しました。製造歩留りは、原料を100としますと、軟体部(ウロ除去後)が26.2パーセント、くん乾後で10.1パーセント、製品で12.4パーセントでした。ホタテの甘味と塩加減のバランスもよく、油もよくなじんでおり、試食の結果は非常に良好でした。しかし、ミミの部分に少し硬さがありましたので、くん乾時間については、原料の大きさにもよりますが、もう少し短くても良いのではないかと判断しています。

2. 佃煮
〔製造工程〕
ホタテガイ→一番煮→殻はずし→軟体部→ウロ除去→調味液の浸漬→加熱(1時間)→冷却→再加熱(20分)→液切り→冷風乾燥(30分)→製品。
調味液の配合は、原料に対して、水飴33パーセント、砂糖17パーセント、醤油17パーセントを加えます。そして、弱火で軽く沸騰させながら加熱します。最後の冷風乾燥は、冷却と艶だしを兼ねて行います。製造歩留りは、原料を100としますと調味加熱後で17.8パーセント、製品で17.1パーセントでした。佃煮の成分は水分が43.6パーセント、たん白質が33.1パーセント、脂肪が1.2パーセント、塩分が1.6パーセントでした。官能検査の結果では、味、硬さとも非常に良いという評価を得ています。(中央水試加工部)

ちょっとためになる話

アリストテレスのちょうちん(ランタン)
  哲学と聞くとアレルギーを起こしそうな人でも、古代ギリシャの偉人であるアリストテレスの名前は何度か耳にしていることがあると思います。この教科書ぐらいでしか耳に触れない人の名前が日頃目にするウニの一部に付けられていることはあまり知られていないようです。

  ウニの口の固い骨とそれに付着する筋肉とがそれで、生物学者でもあったアリストテレスの名にちなんで付けられ、ちょうちんというのは、その形(内部が空洞になっている)が西洋の”ちょうちん”(”ランタン”ともいう)に似ていることによるものと考えられています。