水産研究本部

試験研究は今 No.78「エビについて教えて下さい」(1991年9月27日)

Q&A? エビについて教えて下さい。

(Q1)エビを一番多く食べているのは日本人だと言うのは本当ですか?

(A1)本当です。家計消費では年間一人当り約900グラム、輸入量は年間28万トンですので国民一人当りでは約3キログラムとなり、世界一です。


(Q2)どういう種類のエビが食べられているのですか?

(A2)輪入で多いのは東南アジア方面からのクルマエビ類で、北欧からのホッコクアカエビもあります。日本国内で生産されているのはクルマエビ類やイセエビ類、タラバエビ類など年間5万トンをやや下回ります。


(Q3)北海道でとれるエビはどんな種類ですか?

(A3)北海道で漁獲されるエビ類はホッコクアカエビ、トヤマエビ、ホッカイエビ、ヒゴロモエビなどで、これらはすべてタラバエビ科に属します。平成2年には4,400トンのエビが漁獲され、一番多いのほホッコクアカエビで2,700トンです。エビ類全体では全国の1割程度ですが、ホッコクアカエビは北海道が半分以上を占めています。


(Q4)ホッコクアカエビはどこにいるのですか?

(A4)その名(北国赤えび)のとおり、寒い北の海に分布しており、北海道周辺では日本海、太平洋、オホーツク海沖の水深200~600メートルに生息しており、本州日本海側の島根県以北でも漁獲されています。外国では、北極周辺の北大西洋、北海、ベーリング海、北太平洋、オホーツク海と北半球に広く分布しています。


(Q5)ホッコクアカエビの生活の様式はどの海域でも同じですか?

(A5)例えば成長の仕方についてみると、雄性先熟の雌雄同体ということはどこのものも同じです。つまり、最初は雄として成長し、その後性転換して雌になり、産卵してから受精卵を腹部に抱いて幼生をふ化させます。しかし、性転換する年齢、1回目の産卵を行なう年齢、寿命、産卵期、ふ化期などは海域によって異なります。これらの違いは生息している水温と関係が深く、例えば北極に近い海域では水温の高いところと比べると、成長が遅くて寿命は長く、さらに雌として成熟するのが高年齢になってからであることが分かっています。


(Q6)それでは、北海道のホッコクアカエビはどういう特徴があるのですか?

(A6)北海道の日本海に生息するホッコクアカエビは本州の日本海のものとほぼ同じで、雄から雌に性転換するのは5歳半、1回目の産卵は満6歳の4月~5月ごろ、抱卵を終えてふ化する時期は満7歳となる翌年の2月ごろです。その後1年間は産卵しないまま過ごします。このように雌になってから産卵・抱卵・ふ化・非抱卵の2年周期を3回繰り返し、11年くらいが寿命と考えられています。
北半球全体でみるとホッコクアカエビの寿命は3~4年からせいぜい7年半ですので、日本海のものは大変長寿であると言えます。しかも一生に3回、1年おきに産卵するということもあまり例がありません。なお、同じ北海道でも太平洋側では2年連続して産卵しますし、オホーツク海のものは1年おきに産卵するものと、連続して産卵するものと両方います。まだ分からないことはたくさんありますが、このように北海道はエビを研究する上で大変面白い材料に恵まれているところだと思います。


(Q7)そんなおもしろがって研究して一体何のためになるのですか?

(A7)そう言われると思ってました。まず、エビは北海道における重要魚種の一つで、日本海側の後志支庁管内では、全漁業生産額の中でエビの占める割合は約2割で、留萌支庁管内では4分の1以上を占めています。そのほかの地域でもエビは単価が高いため、大きな役割を担っています。ところが、エビの資源状態が低迷していることにより、資源管理や栽培漁業を進める必要が高まっています。こうしたことを進めるためには、基本的な生物的特性を把握し、その上で資源管理技術や種苗生産、放流技術を開発していかなければなりません。そのようなことを念頭において研究を行っています。(稚内水試 漁業資源部)
    • 北海道で漁獲される主要なエビ