水産研究本部

試験研究は今 No.82「自動計量計測機器の開発」(1991年11月1日)

自動計量計測機器の開発

  最近の科学技術の発展は目ざましく、私たちの日常生活も大変便利になり、その恩恵を受けています。中でも、半導体技術の急速な進歩のおかげで私たちの周りにあるパソコン、ワープロなどは、最新の機種が発売されたその数カ月後には次の新型機種が発売されている昨今です。とにかく、科学技術の進歩は目ざましく、ユーザーの側も新型機種の機能を十二分に発揮させるための使用法を習得し終わらないうちに、次の新型機種が出てくることになりその習得に目の廻るような忙しさです。

  これなどは極端な例でしょうが。私が水産科学の研究に入って30数年になりますが、この間、研究機器類や分析機器類は随分発達し便利になり、仕事の能率もあがりました。しかし、一方では全くと言って良いほど変わってないものもあります。それはCGS単位系と言って、長さ(センチメートル)、重さ(グラム)、時間の基本単位(秒)の日常生活上での測定方法です。このうち、時間の単位(秒)については陸上、水泳、スキー競技などで1/10秒刻みのストップウォッチから1/100秒を測定する機器を開発し競技を行なっています。水産の分野での長さ(センチメートル)と重さ(グラム)の測定は物指しやノギスと秤を使って人手に頼っているのが現状です。

  水産資源の管理を行う上で最初に必要なことは対象生物の資源量の把握で、資源量を調べるために対象生物の長さ(体長)と重量を測定します。この時、誤差をできるだけ少なくするために人手と時間をかけて膨大な量の魚類の測定を行います。ここで時間が限られたり、人手が足りなくて面倒になり、手間、暇を惜しんで測定する個体数を少なくすると、誤差が大きくなってそのツケが計算された資源量の精度に跳ね返り、その後の資源管理に一大損失を与えます。このようなところを自動計量計測にすると、人手の省力化が図られると同時に測定能力が高まり測定精度も良くなって、資源計量計算の精度向上につながります。

  ホタテガイ漁業がまもなく600億円産業になり、サケ、マスにつぐ基幹産業の一つと言われている今日、このように生活の糧となっている水産生物資源の管理、維持、増大に基本的に必要な資源量の把握と資源量計算の精度向上のため、長さと重さを同時に測定し、その結果をすぐに計算するパソコンを組み合わせ、誰にでも操作のできる自動計量計測機器の開発が必要ではないでしょうか。私達の身近な例として医療の世界ではほとんどが医者と医療機器メーカーとの共同で医療機器の開発を行っていますが、水産の世界でも誰かが機器を開発してくれるのを待つのではなく、自ら機器メーカーと一緒になって開発して行くことが大切ではないでしょうか。このようなことはそれぞれの地域のみならず、水産業全体の発展に大きな貢献をすることと思います。(網走水試 特別研究員 瀧 襄)

ちょっとためになる話-サケの切り身の色は赤いほどおいしいか-

  シロザケの銀毛の肉色は非常に美しいサーモンピンク、赤色をしています。ベニサケではさらに赤色が強くなっています。昔から、赤色の強いものほどおいしいと考えられており、値段も高いのが普通でした。本当にそうなのでしょうか?

  サケの色は、科学的にいうならば、カロチノイドというもので、人参やとうきびなどの色と同じ仲間です。このカロチノイドと呼はれるものは、サケは自分自身で作ることができないので、餌からとることになりま。したがって、多くの餌を食べているものほど、赤色が強いことが多く、脂ものっていることが多いようです。北洋や沿岸のトキ、メジカ、銀毛の上物では、ある程度赤色の強さで脂ののりぐあいが判定できると思います。

  しかし、ブナサケでは、脂が少なくなっても、赤色が薄くならないということもあるので、色だけで、おいしさを判断することは難しいと思います。一方、ベニサケは赤いカロチノイドをもった餌を中心に食べますので、シロサケよりも色が赤くなっていますが、脂が多いかとなるとそれは一概にはいえません。北海道各地のシロサケの特徴とブナ度合別の性状変化をみるため、水試では、昭和59、60年に全道の秋サケの性状について、一斉調査を実施しています。その中で、脂肪及びカロチノイド含量とブナ度合の関係を調べています。脂肪含量、カロチノイド含量とも銀毛とAブナは比較的高いのですが、B、Cブナは低いという傾向がありました。しかし、カロチノイド含量は非常に個体差が大きく、B、Cブナでも銀毛と変わらない色調のものが数多くあり、色調だけで、ブナ度合や旨さの判定は難しいということがここでも科学的に明らかになっています。(中央水試)