水産研究本部

試験研究は今 No.85「津軽海峡の資源増大を目指して-知内漁業協同組合人工種苗中間育成センター・ウニ人工種苗センター-」(1991年11月29日)

浜のウォッチング~浜の声~  津軽海峡の資源増大を目指して 知内町漁業協同組合人工種苗中間育成センター・ウニ人工種苗センター

浜のウォッチング~浜の声~
  今回の浜ウォッチングは道南知内町の人工種苗中間育成センターとウニ人工種苗センターを訪ねました。中間育成施設は、昭和59年6月に北電火力発電所の温排水利用の施設として、ウニ種苗センターは、昭和63年9月に人工採苗施設として、どちらも発電所敷地内に建設され、津軽海峡地域における栽培漁業堆進の中核的な役割を果たす施設として期待されています。お話は知内町漁業協同組合のセンター主任平井さんにうかがいました。

  • まず、施設の概要から教えてください
    • 中間育成施設は、10立方メートル水槽17基、50立方メートル水槽2基を備え、ヒラメ、クロソイの中間育成を行っているほか、今は試験的にマツカワとババガレイを収容しています。この施設は、当初温排水利用の施設として建てられたのですが、発電所の稼働が常時一定ではないので、現在は温排水は利用していません。ウニ種苗生産施設の方は80基の7.5立方メートル水槽を有し、7ミリメートルサイズ500万粒の生産能力があります。
  • 種苗生産の内容はどうなっていますか
    • 中間育成施設では津軽海峡に面した9市町村で構成する協議会が主体となって、7〜10月までクロソイとヒラメの中間育成を行っています。この間の経費は協議会が負担します。今年ヒラメは、日本栽培漁業協会宮古事業場から導入した3センチメートル種苗を13センチメートル程度まで育成し、9月末に海峡3か所から2.5万尾ずつ合計7.5万尾放流しました。また、クロソイは9か所に3.6万尾放流しました。種苗放流後の中間育成施設では組合単位で放流用ババガレイなどの中間育成を試験的に行っています。ウニの人工種苗は、7ミリメートルまでこの施設で生産していますが、8市町村・18単協で構成する協議会が、知内の前浜で中間育成し、有償で各会員に配付しています。
  • どんな苦労や.悩みがありますか
    • 道南はどこでも同じだと思うけどウニの場合、夏場の高水温が悩み。その対策に今年ヒートポンプを導入して海水の冷却をしましたが、能力に限界があり全部はカバーしきれない。それと相手が生き物なので、特にヒラメは病気になりやすいので気を使いますね。幸い今年は病気の発生もなく順調でしたが。あと、そろそろ施設も古くなってきたので、これからはかなりメンテナンスも必要になるでしょうね。
  • 施設の職員数は
    • 組合の正職員が2人と臨時雇用3人でやってます。
  • 種苗放流の成果は
    • ヒラメとクロソイの場合、放流数が少ないので、漁獲量が増えるまでにいたっていませんが、人工種苗の再捕報告や混獲割合が最近は目に見えて上がってきていますから、漁業者の啓蒙という意味も含めて、モデル的役割は十分果たしていると思います。ウニの方は、もともとここの資源量が少なく人工種苗に頼らざるを得ない状況にあります。平成元年7月に放流した種苗が去年から生産対象になり始めて、かなり期待が持てるようです。うちでは7ミリメートルの種苗を中間育成施設で20ミリメートルまで育てて放流しているんですが、放流2年後の生存率が約50パーセントで、これはかなり高い数字だと思います。
  • 今後の種苗生産の方向は
    • ヒラメ、クロソイは施設の限界でこれ以上収容できないし、今のところ増築する予定もありません。今後は他地区の施設もできてくるでしょうから、そうなれは放流数も増えて、漁業生産にも結びついてくると思います。ウニは、初めは前浜に200万〜250万粒放流する予定だったんですけど、磯焼けの心配もしなけれはならないので、とりあえず150万粒程度を放流しています。施設の潜在能力はあるし、価格も低めに設定していますから、需要さえあれば増産は可能ですけど、これからはよその施設もできますからね。そういうわけで、どちらも当面現状維持と言うところでしょうか。
  • どうもありがとうごぎいました