水産研究本部

試験研究は今 No.87「北海道周辺海域の海図への円グラフ・数値表示プログラムの紹介」(1991年12月13日)

雄冬岬で再補されたハタハタ

  晩秋から初冬にかけて、厚田沿岸に産卵のため接岸するハタハタは、昭和36年1,300トンをピークに、56年200トン、57年以降40トン以下の漁獲で激減しています。

  道西日本海のハタハタの産卵場は、厚田沿岸及び積丹半島周辺でしたが、資源の減少により積丹半島周辺は産卵場の痕跡を残す程度となり、現在は厚田沿岸だけになりました。したがって、道西日本海のハタハタはこの海域の特産品として重要な資源になっていますが、魚群行動や沖合生活及び幼魚の生態など不明な点が多く、資源回復や資源管理を推進するためにもこれらを明らかにする必要があります。このため、平成元年~2年に産卵接岸群を対象に396~270尾の標識放流を行いました。その結果、再捕された69~63尾は南下行動し、その大部分は2日前後の短期間に産卵し、終われば直ちに沿岸から移動することが明らかになりましたが、これまでは沖合での再捕はなくその生活実態は不明のままです(平成2年度ハタハタ資源調査報告、育てる漁業第221号参照)。

  本年もハタハタの漁期に入りましたが平成2年11月19日に放流したのちの1尾(体長145ミリメートル、体重36.9グラム、♂)が、体長およそ160ミリメートルに成長して、1年経過した11月4日雄冬岬沖水深200メートル以深(農林海区324)で沖合底曳網漁業によって再捕されました(留萌南部地区水産技術普及指導所)。道西日本海の沿岸で放流したハタハタが、親魚として接岸前に深海の生息域付近で再捕されたのは初めてで、これまで推測された沖合生息場と資源の関係及び接岸道程などを解明する手掛かりとして貴重な資料となりました。標識放流は、本年も実施しますので標識魚の発見と沖合の情報提供の協力をお願いします。(中央水試 漁業資源部 福田敏光)

北海道周辺海域の海図への円グラフ・数値表示プログラムの紹介

  水産試験場の各種報告書に魚群やプランクトンの分布図として、海図上の調査点に採集された個体数を示す円を描いたもの(作図例)がよく用いられています。このような図の作成に当たっては、作業に手間がかかる上に、図の大きさと円の大きさのバランスが悪くてやり直すといったことも起こります。また「漁況速報」などに掲載するには迅速さも要求されます。こういったことに対応するため、作図作業をパソコンで行うプログラムを作成いたしました。

  また近年では漁業協同組合なども独自に調査を実施し、同様の作業を行うことも多くなってきています。そこで、このプログラムが現場での効率化の助けになればと思い、処理内容を紹介いたします。
  1)使用機種:N88-日本語BASIC(86)、(MS-DOS版)が動作可能な機種。

  2)入力:調査点の緯経度(度・分)と調査結果の数値(最大5項目)。
※調査位置はデッカのレーン値でも可

  3)表示:
(1)数値(○○○.○○の固定)。
※漁場水温などの表示が可能。
(2)ポイント(位置)。
(3)数値に比例(常用対数比例も可)した半径の円。
(4)任意の区切り(例:0~10なら半径が2、10~20なら半径が4、・・・)で規定した半径の円。
以上の(1)~(4)を海図上の調査位置に表示します。なお、海図については北緯36°00′~48°20′~東径136°00′~180°00′の範囲内で、自由に設定しての作図(海岸線、200メートル等深線、100メートル等深線)が可能です。

  また、海図用のデータについては、エディッター(LOTAS-123でも可)などで、各前浜の海岸線・等深線をより詳細にすることができます。

  4)保存・管理:入力したデータをフロッピイ・ディスクに保存し、呼出・訂正・追加ができます。

  なお、デッカのレーン値から緯経度を計算するプログラムについては、松井孝幸氏(北海道デッカ航路標識事務所>作成の”DECCA BAS”を使用しました。
〔追記〕以前、「北水試だより」第5号(1989年3月)で紹介しました「海洋観測データ処理プログラム」は、本プログラム中の『海図への数値表示機能』を組み込むなど、バージョン・アップされています。(網走水試 漁業資源部 山口幹人)

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