水産研究本部

試験研究は今 No.93「サクラガイ産卵期調査」(1992年2月7日)

サラガイ産卵期調査

図1
  サラガイ(地方名はシロガイ、ジョロウガイ)は茨城県、富山県以北から北海道朝鮮半島及びサハリンの水深20メートル以浅の砂泥底に分布する二枚貝で、北海道沿岸ではホッキガイ漁場にごく普通に見られます。この貝は、以前からホッキガイやエゾバカガイとの混獲で水揚げされていましたが、漁獲統計には記載されていません。最近は、消費の拡大に伴って、サラガイを重視するようになった漁業協同組合が増えてきました。ところが、サラガイの生態は、今のところあまり良く解っていないので、適切な資源の管理策が確立されておらず、漁獲量や漁獲サイズの規制は専ら漁業協同組合独自の判断で行われているのが現状です。そこで、適切な資源管理を行うための基礎資料を得ることを目的として、苫小牧および静内海域に分布するサラガイの産卵期調査を行いました。

サラガイ
  産卵期を推定するには、生殖巣指数という貝殻を除いた体重に占める生殖巣の重さの百分率を毎月計算します。この生殖巣指数は貝の成熟が進めば生殖巣が大きくなるので増加し、産卵期に入れば卵や精子が放出されるので減少します。図1に苫小牧および静内海域で採集したサラガィの生殖巣指数の推移を示しました。生殖巣指数の値は、苫小牧では4月中旬から7月下旬にかけて約6から約18に増加し、その後9月中旬までに約8に減少しました。その後の指数は、1月下旬まで約8~9の値で推移し、2月下旬から再び増加しました。一方、静内では5月下旬から7月中旬にかけて約20から約26に増加し、その後9月下旬までに約9に減少しました。したがって、サラガイの産卵期は、苫小牧では7月下旬~9月中旬まで、静内では7月中旬~9月下旬までと推定されます。

  今回の調査によって、苫小牧と静内海域におけるサラガイの産卵期が明らかになりました。比較のために他の地域の産卵期を調べてみましたが、サラガイに関する資料は非常に少なく、道南の知内で行われた1例のみでした。その結果を見れば、サラガイの産卵期は9~10月であり、胆振、日高沿岸よりも遅くなってます。また、知内のサラガイは雄では殻長50~55ミリメートル、雌では殻長65~70ミリメートルで初めで成熟し、さらにこの大きさになるまでには雄で約6年、雌で約8年かかることから、サラガイは産卵するようになるまで非常に時間のかかる貝であることが伺えます。したがって、一度資源状態が悪化すれば、再び回復するまでに長い年月を要すると考えられますので、今後は安定的に資源を保持できるレベルの漁獲量を算出するための研究を行う必要があるでしょう。(函館水試 室蘭支場 桜井 泉)

「見て・さわって・考えて」1300人

92試験研究機関おもしろ祭りの様子
  92試験研究機関おもしろ祭り(北海道立試験研究機関公開講座)が1月30日、JR札幌駅1階西コンコース、ライラックパセオに道立の農林水各試験場、衛生研究所などの12機関を集め開催されました。

  水産試験場からは、加工試作品と主に北海道でみられる貝の標本の展示、そして試食品としてエクストルーダーによるサケのビーフジャーキータイプとコンブスナック、ホタテゴナードのソーセージ、キュウリウオの調味乾製品、アカボヤの調味乾製品そしてすでに市販化されている厚岸漁業協同組合の海鮮めんを来場された皆さんに提供しました。この中で好評だったのが、海鮮めん、ホタテゴナードのソーセージ、サケのビーフジャーキータイプで、海鮮めんは札幌にも売ってないのだろうか、他の試作品についても製品化しないのかなど、うれしい間い合わせがありました。

  終わってみれば、入場者数は公開講座始まって以来の1300人を記録、日頃実験室で調査研究を行っている研究者も、この日ばかりは来場者への説明や即売場の売子におおわらわでうれしい悲鳴を上げていました。この日皆様からいただいたアンケートも600件以上になりました。このアンケートの結果は、現在集計中ですが、来年度以降のこの種の催しに生かして生きたいと思います。ご協力ありがとうございました。