水産研究本部

試験研究は今 No.94「平成3年度日本海におけるウニ身入り状況について」(1992年2月14日)

専技室から:平成3年日本海におけるウニ身入り状況について

  平成2年の状況は、この”試験研究は今NO.44”でお知らせしたところですが、平成3年も前年同様、日本海の各地からウニが少ない、身入りが悪い、さらには禁漁もやむを得ないという声が聞かれたので、専技室では今後の増殖対策に活用するため、身入りや資源状況の調査を行いました。調査は稚内市から福島町までの日本海を対象にし、水産技術普及指導所にそれぞれの担当地区の状況を調査してもらいました。

  調査は「身入り」「身入りの時期」「身の色」「海藻繁茂」「年齢構成」「殻径組成」「稚仔発生」「資源と漁獲状況」「水温状況」「夏期斃死」などの項目についてエゾバフンウニとキタムラサキウニに分け、例年と比較したものです。

  今回はこの中から操業上最も関心のある「身入り」と「海藻繁茂」及び「資源と漁獲状況」を中心にお知らせします。

エゾバフンウニ(ガゼ)

  28地区から報告があり「身入り」と「海藻繁茂」の状況を図-1に示しました。身入りもよく餌となる海藻もある地区は僅かに2カ所です。身入りは並みだが餌は良い・・・4ヶ所、身入りも餌も例年並み・・・4ヶ所、身入りも餌も悪い・・・13ヶ所、その他・・・4ヶ所でした。大まかな見方をしますと、日本海北部(宗谷~増毛)では小平が共に良く、留萌が共に悪かった他は例年並みで、海藻は利礼・天売で良好。中部(浜益~西島牧)では神恵内が共に良く、浜益・厚田が身入りは例年並みか良いが餌はバラツキがあり、全体的には変化が大きい。

  南部(瀬棚~福島町)では江差が並みの身入り、瀬棚で餌が良かった他は共に不良だったと言えます。
    • 図1 エゾバフンウニの「身入り」と「海藻繁茂」の状況

キタムラサキウニ(ノナ)

  31地区から報告があり、ガゼ同様に結果を図-2に示しました。身入り餌共に良い地区は焼尻・小平・浜益・神恵内の4ヶ所です。身入りも餌も例年並み・・・2ヶ所、身入りも餌も悪い・・・15ヶ所、その他・・・10ヶ所でした。大まかな見方をしますと日本海北部では宗谷・留萌・増毛が餌不良の他は身入り餌共に例年並みか良い。中部では浜益・神恵内が共に良く岩内が身入りが例年並みの他は全て身入り餌共に不良。南部では江差が共に例年並み、奥尻・瀬棚で餌が良かった他は全て身入り餌共に不良でした。

  このようなことから、両方のウニ全体でとらえますと、身入りと餌の状況は、「日本海北部では例年並み、中部では例年並みか不良とバラツキがあり、南部では不良でした。」ということが一般的に言えるのではないかと思います。
    • 図2 キタムラサキウニの「身入り」と「海藻繁茂」の状況

資源及び漁獲状況

  昭和60年から平成2年までの漁獲量(むき身)の推移を図-3に示しました。ウニ全体では昭和63年の827トンをピークに近年減産が続き、特にエゾバフンウニにその傾向が顕著で、中でも北部地区の減産が著しくなっています。調査結果によるとエゾバフンウニは89パーセントの地区で、またキタムラサキウニは48パーセントの地区で資源が減少していることから、全体的に資源の好転が見られず、今後の漁獲量への影響が心配されます。各地区からの報告の中には、平成元年2年と続いた夏期高水温によるエゾバフンウニの斃死で資源が減った分をキタムラサキウニでカバーしている。漁獲は深浅移植や漁獲努力を増やすことで維持されているが移植ウニそのものが減少し、これまでよりもっと深いところから移植しなければ確保出来なくなるなど、厳しい状況も生まれていますので、より一層の資源管理が望まれるところです。(水産業専門技術員 中尾博己)
    • 図3 昭和60年からのウニ漁獲量の推移