水産研究本部

試験研究は今 No.159「クロソイの栽培漁業に取り組む-寿都町クロソイ種苗生産施設-」(1993年10月1日)

浜の声 -浜ウォッチング クロソイの栽培漁業に取り組む 寿都町クロソイ種苗生産施設-

  今回の浜ウォッチングでは、平成2年度、後志支庁管内寿都町の矢追地区に建設された「クロソイ種苗生産施設」を訪ねて来ました。ここで種苗生産に取り組まれている寿都町漁業協同組合増殖係の小島智勝さんにお話を伺いました。

  今日は、よろしくお願いします。北海道では、たしか鹿部町の道立栽培漁業総合センターでも従来からクロソイの種苗生産に着手していたと思いますが、ここ寿都町でクロソイの種苗生産施設を設置するに至った経過をお聞かせください。
  寿都町でも、昔からクロソイをはじめとする根付け魚は、たくさん漁獲されていました。しかし、とるだけの漁船漁業では、だんだん水揚げが減少して来ていることから、なんとか魚類資源を増大させたいということで、この事業に取り組むことになりました。クロソイは、定着性が強く、移動範囲が小さいといわれています。このため、ここで自分たちが育てて放流すれば、大きくなってまた寿都で漁獲される可能性が高いと考えられたからです。
それで、道単独補助制度である「日本海漁業振興特別対策事業」の適用を受け、寿都町漁協が事業主体になり、約2,300万円の事業費をかけて建設しました。施設は、平成2年7月から供用を開始し、ここでの種苗生産を開始しています。

  施設の概要を教えてください。
  施設の面積は、平屋建130平方メートルの広さです。飼育用の水槽は、5トン角形水槽4基と7トン角型水槽2基、それと屋外にも5トン水槽を置いています。このほかに餌料培養用水槽として、500リットルパンライト水槽12基とアルテミア孵化水槽が5基あります。施設で使用する海水は、施設のすぐ前の海から揚水し、生海水で飼育しています。また、餌料培養の際には、ろ過調温海水を使用しています。

    • 担当の小島さん
  平成2年から施設の供用を開始したということですが、具体的にはこれまでにどれくらいの数量の種苗生産が行われているのですか?
  まず、最初の平成2年には、10~15センチメートルサイズの種苗を約2万尾生産しました。これを、一部の稚魚にSUという文字が入った標識を装着し、寿都の浜に放流しました。翌、平成3年度には1万尾、4年度が11万尾、そして今年5年度は、約14万尾の種苗が出来ました。

  今年のこれまでの状況を少し詳しくお話ししますと、春に地元の定置網に入った体長約40~45センチメートルの親魚を3尾確保、これを水槽に収容し、出産(クロソイは胎生魚)させました。だいたい親1尾から10万尾の仔魚が生まれてきます。餌は、海産クロレラの培養から始まり、仔魚の成長に合わせてワムシからアルテミア、魚卵、そして配合餌料と切り替えていきます。先の北海道南西沖地震の時には越波した水が施設に入ってきたのですが幸い大きな被害もなく今のところ順調に経過し、約5~8センチメートルほどに育ってきました。このうちの一部は、間引き出荷しながら、最終的には10センチメートルまで大きくする予定です。

    • クロソイ稚魚
  ここは、何人でやっているのですか?
  専従は、私一人です。あと、隣のウニの施設との兼務が1名です。

  この事業に携わっていて、困っていることなどありますか?
  一番の問題としては、施設規模がそれほど大きくないので、収容能力が小さく高密度飼育を強いられることです。このため、魚の管理には特に気を使います。水槽の掃除は、1日2回ずつ欠かす事が出来ません。

  浜の人たちの反応は、どうですか?
  はじめのうちは、あまり反響がなかったようですが、4年経過し、浜にもだいぶ知られ、昨年あたりから徐々に放流した魚も漁獲されるようになってきました。浜の関心は、高まりつつあると思います。

  最後に今後の抱負、将来展望などがありましたらお聞かせください。
  個人的には、やはりもう少し施設を拡充したいですね。あと、技術的には種苗の量産が出来るようになってきたので、これからは、さらに実績を高めて、安定した種苗生産が出来るようにし、浜の漁業生産のプラスになるよう努力していきたいと思っています。

  一人で大変でしょうが、これからも寿都の栽培漁業の発展をめざして頑張ってください。今回は、いろいろお忙しいところ取材にご協力下さいまして、ありがとうございました
(中央水試 企画情報室)