水産研究本部

試験研究は今 No.184「道南日本海を中心に南方系バフンウニが増えている!~」(1994年5月20日)

試験研究は今 No.184「道南日本海を中心に南方系バフンウニが増えている!?」(1994年5月20日)

道南日本海を中心に南方系バフンウニが増えている!?

図1
  南方系バフンウニと言ってもエゾバフンウニのことではありません。これは福井県の「越前ウニ」や山口県「下関ウニ」などに代表されるように、練りウニや粒ウニの原料として最も優良とされているウニなのです。価格は、最近韓国などからの塩ウニ加工品の輸入などの影響を受け若干下げ気味ですが、それでも剥身で1万円~2万円で取引されているようです。この正真正銘の「バフンウニ」が近年道南日本海を中心に目立つようになりました。このウニの一般的な分布域は本州北端から九州南端までとされ、棲み場は潮干帯から潮下帯の水深4メートル位までに極めて普通に生息するとされていました。従って、津軽海峡付近は分布の北の縁辺部に位置していると言えるでしょう。

  さて、見慣れないとエゾバフンウニと仲々区別がつきません。二つ並べて比べると分かりやすいのですが、ここでは図1にマンガチックに表現してみました。機会があれば試してみて下さい。これまで述べたように分布の中心が南方であることからテーマにあえて“南方系”と付けたのです。バフンウニは、津軽海峡近辺の松前町では犬も食わないまずいウニ「イヌガゼ」と、また福島町ではエグ味があることから「ニガガゼ」と呼ばれています。このことからも想像できるように北海道では一切利用されていないばかりか邪魔物扱いされている状況です。バフンウニにとって幸か不幸かある意味で保護される形になったのです。

  さて、このバフンウニが平成3年(1991年)頃から目立ち始め、漁業者の関心が集まるようになりました。同時に漁場への影響が心配され始めたため、これに応える形で専技室が中心となって、指導所・現地の協力を得て、分布の実態や有用ウニ等との餌の競合について平成4年から調査を開始しました。
図2
  この結果の概要をお知らせします。

  分布は、日本海と津軽海峡で、北は利尻島から初山別村・小樽市忍路・寿都町・江差町で、また海峡では福島町浦和・上磯町茂辺地・函館市根崎町で確認されました。これにより日本海北部から津軽海峡中部まで広く分布していると考えられ、中でも積丹半島以南ではごく普通に分布しているものと思われます。分布密度は上磯町茂辺地では平成4年6月に9個/平方メートル、平成5年6月では、石の下部で87個/平方メートル、玉石地帯で2個/平方メートルを確認しました。

  また、福島町では浦和で平成4年7月に22個/平方メートルを確認しています。平成5年には浦和と吉野の2地区を対象に4回(6・9・12・3月)調べたところ、月別平均密度は、浦和では6~20個/平方メートル、吉野では1~5個/平方メートルの巾で変化がありました。この内の9月の様子を図2に示しました。
図3
  この様に上磯町・福島町では沢山生息していることが明らかになりました。

  これらの年齢はと申しますと、これまでの知見から2~4年の若いウニと推定されます。

  また、産卵期について上磯町茂辺地で調査したところ図3に示しました身入りの変化が見られました。これにより産卵は12月から5月までの長い間続くものと考えられました。
図4
  ところで、バフンウニはエゾバフンウニと同じ様にコンブが大好きなのでしょうか??野外での実験は仲々難しいので水槽実験を行いました。この結果を図4に示しました。

  明らかにエゾバフンウニが沢山コンブを食べました。その量はバフンウニの約4倍と試算されました。バフンウニはコンブを食べる量が少ないと言っても個体数が多ければ同じことです。人工種苗放流によりエゾバフンウニを増やす努力が払われていますが、漁場の収容力や生物のバランスを考えると、何か知恵を働かせる必要があるのではないでしょうか!
今後は利用加工開発を積極的に進めたいと思います。豊かな資源を生かすために…