ヒラメ種苗生産における好適飼育条件について~成果発表会から
今回は「平成6年度水産試験研究成果発表会」で発表された課題のなかから、「生物ろ過処理による魚類飼育海水の高度利用技術開発試験(共同研究)」について、簡単にご紹介したいと思います。
なお、この試験は平成3年度から3年間、北海道立栽培漁業総合センターと、?楢崎製作所との共同研究で進められました。
なお、この試験は平成3年度から3年間、北海道立栽培漁業総合センターと、?楢崎製作所との共同研究で進められました。
目的
海産魚類を陸上水槽で飼育する場合、一般に海水を掛け渡し(流しっぱなし)で行っています。しかし、北海道では冬場の水温が低いため加温する必要があり、コスト高になっています。そこで、温めた海水(15度~23度)を循環させ、何度も利用できれば、加温経費をかなり安くすることができます。ただし、飼育水をそのまま循環させたのでは、残飯やふんなどが分解され、水中のアンモニア含有量が増加して、魚の成長に悪影響を及ぼします。
楢崎製作所では、生物ろ過装置により硝化細菌の作用で飼育水中のアンモニアや亜硝酸を除去する技術を持っています。この技術を用いてヒラメを材料に、飼育の可能性と生物ろ過システムの開発に関する研究を実施しました。
楢崎製作所では、生物ろ過装置により硝化細菌の作用で飼育水中のアンモニアや亜硝酸を除去する技術を持っています。この技術を用いてヒラメを材料に、飼育の可能性と生物ろ過システムの開発に関する研究を実施しました。
結果の概要
- ヒラメの親魚を養成し、水温と光周期を制御して産卵時期を調節し、生物ろ過とヒートポンプでコストの比較を行いました。ヒラメの産卵は、通常4月中旬ごろからですが、平成3年は約3ヵ月早期化することができました。週2回の採卵で、2月には1,470グラムの浮上卵が採(と)れ、一回平均360グラムを越えていました。ふ化率も50パーセント近くに達し、実際の種苗年産で使用できる卵質でした。加温経費はヒートポンプ(HP)の約3分の1で、従来のボイラーより効率が良いとされるHPよりもさらに効率が良い結果となりました。
- 平成4年度はヒラメの中間育成から養殖用大型種苗(全長25センチメートル)の養成を試みました。また、病害発生に備えて循環水の紫外線殺菌(UV)について検討しました。8月7日から翌年1月29日まで約6ヵ月間の飼育中、共食いなどで数十尾が死んだ以外は減耗がなく、成長も良好でした。水質についてはアンモニア態窒素(NH4-N)、亜硝酸態窒素(NO2-N)とも低濃度に保たれました。飼育水中の生菌数はUV装置をセットしてから著しく減少しました。
- 平成5年度も中間育成から試験を開始しました。UV装置の効果を明確にするため、水処理の系統を完全に2つに分離しました。8月9日から飼育を開始し、12月14日の時点で平均全長は約25センチメートルに達しました。この間、一部の成長不良個体が共食いで、数十尾程度減耗したものの、ほかには特に病害の発生もなく死亡個体はほとんどありませんでした。
まとめ
生物ろ過システムを用いることにより、ヒラメの中間育成から親魚の養成までが可能で、低コスト化に大きく役立つことが明らかになりました。
*この文章は、成果発表会の講演要旨集をもとに、再編集いたしました。
*この文章は、成果発表会の講演要旨集をもとに、再編集いたしました。
(中央水試企画情報室)
トピックス
平成6年度水産試験研究成果発表会開催される
先ごろ、札幌市内で水産試験研究成果発表会が開催されました。当日は、道水産部と水試、孵化場のほか栽培漁業振興公社、系統各連合会、大学など合わせて約120人が参集しました。水産部長挨拶のあと次の5課題が発表されました。
次に、中央水試の瀬戸雅文施設工学科長から『水産工学研究の課題と今後の取組み』と題する水産工学室の紹介が行われました。このあと中央本試の西川企画情報室長と水産孵化場の小島企画室長を座長に『研究成果をいかに生かしていくか』と題する総合討論に入り、熱心な意見交換が行われました。
- 『ウニ種苗中間育成過程にみられる生理障害防除技術の開発(共同研究)』
(中央水試 田嶋健一郎 栽培科長) - 『ハイテク加工食品開発試験』
(釧路水試 北川雅彦 利用科長) - 『生物ろ過処理による魚類飼育海水の高度利用技術開発試験(共同研究)』
(中央水試 斎藤節雄 養殖科長) - 『シシャモの資源調査と資源管理』
(釧路水試 森 泰雄 管理科長) - 『先端技術開発試験』
(水産孵化場 小出展久 主任研究員)
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(中央水試企画情報室)