水産研究本部

試験研究は今 No.187「浅海砂浜域での飼料コンブ養殖技術開発試験について」(1994年6月10日)

浅海砂浜域での飼料コンブ養殖技術開発試験について

はじめに

  留萌管内小平町鬼鹿地先(水深6~7メートル)において、平成5年11月~平成6年4月にかけて、浅海域砂浜地帯を利用して作業性、簡易性に優れ安価な施設によるコンブ養殖方法の確立を目指し、小平漁業協同組合及び小平漁業協同組合青年部の協力のもとに技術開発試験を行ったのでその結果について紹介します。

実施場所

  小平町鬼鹿地先 今回の試験では立縄式、延縄式とも天然礁(干松礁)の陸側で、水深6~7メートルの場所に設置した。(第1図)

実施結果

  種苗糸の搬入および本養成開始 種苗糸は利尻町の仙法志漁業協同組合よりリシリコンブの促成種苗糸を購入、11月6日に地元まで搬入し、陸上施設で保管、11月20日より本養成を開始した。

  設置施設は立縄式20基、延縄式5基とした。使用した種苗糸は、立縄式18メートル、延縄式250メートルであった。(第1表、第2図)

立縄式
3月1日の測定結果
3月1日に繁茂状況を確認するため測定を行った結果、1株あたりの平均湿重量は666.6グラム(平均35.0本)、1本あたりの平均湿重量は19.0グラムであった。(第2表)。
さらに、成長の良好な個体より上位10本について、葉長、葉幅、葉重量を測定した結果、平均葉長189.8センチメートル、平均葉幅7.0センチメートル、平均重量63.8グラムであった。(第3表)

4月23日の測定結果
4月23日に全量引き揚げ、陸側のウニ漁場に給餌した。
このうち、2株を採取して測定した結果、1株あたりの平均湿重量は2,702.6グラム(平均38.0本)、1本あたりの平均湿重量は71.1グラムであった(第4表)。
さらに、成長の良好な個体より上位20本について、葉長、葉幅、葉重量を測定した結果、平均葉長239.0センチメートル、平均葉幅12.8センチメートル、平均重量161.1グラムであった(第5表)。

 延縄式
延縄式は、2月上旬の大時化により全施設とも破損、流失した。

成果

  促成種苗糸の挟み込みは、養成網50センチメートルあたり4株としたため、施設1基あたりの株数は、4.5メートル÷0.5メートル×4=36株である。1株あたりのコンブ収量は2,702.6グラムであるから施設1基あたりのコンブ収量は、2,702.6グラム×36株=97.3キログラム。したがって、立縄式20基で、97.3キログラム×20基=1,946.0キログラムの収量を上げたことになる。

  本試験により水深6~7メートルの浅海域砂浜地帯においても、立縄式施設であれば冬期日本海の波浪に対して充分耐えうることが実証された。

問題点

  立縄式飼料海藻施設は、1基あたりのコンブ収量が限られるため、企業化する場合は施設を多量に設置しなければならず、延縄式に比べ広く漁場を確保する必要がある。

  本試験では育成期間が11月から4月までであったが、より効率的な生産をあげるため、早期本養成開始を図るとともに、最大収量となる5万ないし6月まで育成することが望ましい。
(留萌南部地区水産技術普及指導所)
(稚内水産試験場:専技)

    • 図1,2と表1,2,3,4,5