水産研究本部

試験研究は今 No.188「道東出漁獲される小型夏イカの魚価の向上を目指して」(1994年6月17日)

試験研究は今 No.188「道東で漁獲される小型夏イカの魚価の向上を目指して」(1994年6月17日)

道東で漁獲される小型夏イカの魚価の向上を目指して

  最近、道東太平洋、特に根室海峡でのスルメイカの漁獲量が増大しています。このうち、夏に定置網で漁獲されるスルメイカは小型のものが主体で、価格が非常に低く魚価の向上が強く望まれています。このため、秋イカと比較しながら小型夏イカに適した高次加工品の試作を行い、その製造方法を検討しました。

  夏イカは7月下旬、秋イカは9月下旬、それぞれ釧路近海で漁獲されたものを使用しました。表1に魚体の大きさと各部位の重量を示しました。これによると、夏イカは秋イカに比べ、外套膜が約5センチメートル短く、重量は約半分でした。夏イカの各部位の重量割合は秋イカと比較して胴肉重量の割合がやや高く、逆に内臓と頭足部重量の割合がやや低い結果でした。表2に胴肉の成分を示していますが、測定した成分には大きな違いはありませんでした。
    • 表1
  イカを加工する際、製品によりボイル工程が必要となりますが、その時に肉の重量あるいは大きさの変化が急激であると製品の外観に大きな影響を及ぼします。ボイルの際の90度での肉の軍量変化と肉の収縮の程度を比較すると、両者で大きな違いはみられず、製品の外観を損なうほどの過度の収縮はみられませんでした。

  いか粕漬けと酔いかを試作したところ、製造工程では工程中のボイル時間を夏イカでは肉厚が薄いため2分間、秋イカで4分間と変化させた以外はすべて従来と同じ工程で製造を行うことが可能でした。両者を原料とした製品は味の面で違いはみられませんでしたが、見た目の大きさが適当で、さらに肉厚が薄いために食べやすい点から夏イカを原料としたものの方が粕漬けあるいは酔いかの原料として適当と判断されました。

  いか飯の試作では、製造工程で調味煮時間を夏イカで40分間、秋イカで1時間と変化させた以外はすべて従来と同じ工程で製造可能でした。秋イカを原料とした製品では米への調味の浸透が弱く、薄い味付けとなり味の面で劣っていました。また、夏イカからの製品の方が見た目の大きさが手ごろで適当と思われました。塩辛の試作では、製造工程で熟成期間が夏イカでは早く3日間で終了し、秋イカでは5日間を必要としました。その他の製造行程は同様でした。製品の外観は肉厚の秋イカが優れていましたが、昧の面では夏イカを原料とした製品の方がイカ特有のうまみがあり優れていました。

  以上のように夏イカは魚体が小型ですが、秋イカを原料とした従来の製造方法の一部を変更するだけで優れた品質の加工品が製造可能なことがわかりました。

  今後は魚価向上の一助となるようこれらの製造方法を広く普及し、その利用途の拡大を進めていきたいと考えています。
(釧路水試加工部 錦織孝史)

トピックス

-厚岸町で北海道牡蠣シンポジウムが開催される-

北海道牡蠣シンポジウム開催状況
  平成6年4月25日(月曜日)厚岸町ホテル金万において全国初(?)の牡蠣シンポジウムが開催されました。

  当日は道内のかき養殖業に従事している関係漁協青年部員を始めとして、市町村や漁協の職員、そして水産指導所、水試の職員合わせて100人以上が集まりました。シンポジウムは、主催者を代表して厚岸漁協丹後谷青年部長の挨拶に始まり、次いで厚岸漁協組合長、厚岸町長の挨拶の後、中央水産試験場企画情報室西川室長から「かきの生態について」の講演がありました。次に西川室長が宮城県カキ研究所動務時代から親交があって、現在地元でかき養殖業を営んでいる畠山重篤氏から「牡蠣の眼で森をみる」と題したユニークな講演があり、参加者は漁業資源を維持していくためには、いかに自然保護が大切であるかを改めて教えられた思いがしたところであります。

  講演後は、各地区のかき養殖業の現状報告として厚岸、サロマ湖、知内漁協の青年部代表者から現在抱えている問題点や将来に向けての取り組み等について報告がされ、引き続きフリートーキングが行われ、参加者は時間の経つのも忘れて活発な意見交換がされました。

  また、シンポジウム閉会後はオープンしたばかりの厚岸味覚ターミナル「コンキリエ」に移して交流会が行われ、参加者一同大いに交流を深めて盛会のうちに終了しました。
(釧路水試企画総務部)