水産研究本部

試験研究は今 No.189「漁場管理船みちしお8号-サロマ湖養殖漁業協同組合-」(1994年6月24日)

-浜の声-浜ウォッチング 漁場管理船-みちしお8号(サロマ湖養殖漁業協同組合)

  今回はサロマ湖養殖漁業協同組合の加藤参事を訪ねて、先に竣工した漁場管理船「みちしお8号」についてお聞きしました。
    • 漁場管理船「みちしお8号」
  (網走水試八木主査)
  この事業の目的を教えてください。
  (サロマ湖養殖漁協加藤参事)
  この船は多目的に利用できる設計をしていますが、この船を造った目的は二つあります。一つは密漁監視を強化して資源管理を促進すること、もう一つは春先のサロマ湖の結氷を早く砕氷し魚介類の生育を促進することです。

  この事業を計画したのは、いつですか?
  平成元年に道単事業(沿岸漁業生産増大特別対策事業)で台船だけを造りました。
それに重機を載せて湖内の結氷を割っていましたが、1台だけでは足りないので、その台船を整備したときから考えていました。

  前にも同じような船があったのですね。
  台船を現場までFRP船でひいて作業をしていましたが、氷で覆われてしまうと砕氷作業効率が非常に悪く相当の日数がかかります。そこで、薄い氷は押船だけでも砕氷出来るよう鋼製とし、両方の船で砕氷作業が出来るようにしました。

  事業費はいくらですか」?
  2隻合計で1億6千万円ぐらいですね。

  それでは、船の構造、規模などについて教えてください。
  漁場管理船は総トン数が19トン、台船は300トンでいずれも鋼船です。

  どれくらいの氷を砕くことが出来るのですか?

  ブッシャーで氷を割る能力は水盤100~150センチメートルといった大きいものだけです。ぶつかって氷を割るにも面積が必要で、小さなものは横に逃げてしまいます。氷面積が小さく氷厚50センチメートル以上の厚い氷は台船に付けた重機で割ります。

  「みちしお8号」は特殊な船だと思いますが、どのような船にするかの苦労話を聞かせてください。
  密漁防止のためには浅海域を航行しなければならず、また、養殖施設の上を航行する必要があることから、押船の吃水を1.4m以内にしなけれぱならなかったことが難しく、船体の軽量化を図るための船型や構造の設計、あるいは特殊鋼板の使用などに苦労しました。また、台船についても搭載する重機が非常に重いもので、船のバランスや耐久性、そして本船とのドッキング方式に気を配りました。これまであまり例のない船型であることから、いろいろ苦労がありましたが、スタッフの充実した(社)漁船協会に設計をお願いしたので、助かりました。

  結構悩まされましたね。普段はどこに停泊しているのですか?
  湧別の登栄床漁港を拠点とし、業務内容に応じて富武士や栄浦にも係留します。

  先ほど密漁の話がありましたが、今年は能取湖で随分捕まっていますね。遊漁や観光目的でサロマ湖を訪れる人は年間どのくらいいますか?
  最近は少なくなっていますが、4~5年前は30万人を超えることもありました。

  「みちしお8号」には密漁監視で活躍してもらわなければなりませんね。押船の方は分かりましたが、台船の方はどのように利用するのですか?
  台船は観光客の多い漁港にアンカーを打って係留し、密漁監視の旗を立て、密漁防止の啓蒙、PRをします。

  その関係でしょうか、ハデな色(緑をべ一スにオレンジ)をしていますね。湖内の結氷を積極的に砕氷すれば海明けが早くやってきますが、広さが広さですから大変な作業ですね。砕氷によって魚介類の生育が促進されるということですが、もう少し簡単に説明してください。
  ホタテガイやカキは植物プランクトンを餌として生活しますが、その餌となるプランクトンは陸の草木と同様に太陽の光を受けて水中に溶けているいろいろな栄養塩類を自分の栄養に変える、いわゆる光合成が盛んになると繁殖します。サロマ湖が結氷すると氷で光が遮断され、水中深く届かなくなるためその繁殖が低下します。そこでこの氷を砕けばプランクトンの繁殖が助長され、水温は上昇しホタテガイやカキの摂餌活動も活発化し成育が早まることになります。

  この船の活躍で密漁が減り、資源保護がなされ、砕氷による早い海明けで健康なホタテ等が大漁されることを願って今日の話を終わりたいと思います。参事、長い時間お付き合いいただきまして、ありがとうございました。
(網走水試企画総務部)
    • 重機で流氷を割って進む台船